抄録
【はじめに】加齢に伴う身体機能の低下により、高齢者の日常生活は徐々に制限されていく。また、諸家らの報告から、特に閉じこもりなどの転倒恐怖症候群が高齢者の活動制限を大きくし、移動能力、バランス能力の低下を招くことが実証されている。そのため、高齢者個々の日常生活を把握し、個別的な介入をすることが、日常生活の活動性を高めると同時に、転倒による寝たきり予防や介護予防につながると考えられている。そこで、併設ケアハウス (B型軽費老人ホーム)入居高齢者の日常生活における活動量、歩行能力、転倒予防自己効力感(以下、効力感)を調査し、介護予防を念頭に今後の運動・生活指導の介入方法を検討したので報告する。
【対象と方法】対象は、ケアハウス入居高齢者のうち、歩行にて施設内生活が自立しており、通常の生活を送ることを説明した上で本研究に同意を得られた21名(男性5名、女性16名、平均年齢82.5±6.5歳)である。調査期間は2003年10月の約1カ月間とした。活動量の計測には加速度計付歩数計ライフコーダ(スズケン社製)を使用し、対象者に7日間連続して装着させ、歩数と運動強度(0~9の10段階、0:安静状態,1~3:ゆっくり歩行,4~6:速歩,7~9:ジョギング)を計測した。また、歩行能力では10m全力歩行時間と歩数を計測し、効力感では20の日常生活動作に対し、転ばずにやり遂げる自信を4段階で評価した。
【結果】入居者の1日平均歩数(以下、歩数)は、男性2,870(1,833~5,178)歩、女性2,601(469~4,808)歩であった。運動強度は、0の安静状態が全体の97.9±1.1%を示した。歩数と10m全力歩行時間に相関は認められなかった。効力感では階段昇降の項目で、歩数(昇:r=0.50,降:r=0.52,p<0.05)、運動強度(昇:r=0.42,降:r=0.49,p<0.05)ともに相関があり、歩数が多く、運動強度が高いほど、転ばずに行う自信があることを示した。
【考察】平成9年国民栄養調査による70歳以上の目標平均歩数(男性5,436歩,女性4,604歩)に対し、対象者の平均歩数は少なく、運動強度については、全員が非常に低いレベルであった。運動強度が低い理由として、転倒に対する恐怖心が考えられる。効力感と運動強度では、階段昇降の項目のみで相関がみられたが、これは施設の環境に慣れ、日頃経験しない階段昇降だからこそ、運動強度との明らかな相関が得られたものと推察される。今後、施設入居高齢者に対し、日常生活のあらゆる機会を通し、歩くことを促すと同時に、具体的な歩き方(普段より少し速く、大股で)や、転倒しない安全な歩行能力を維持するための下肢筋力やバランス能力を高める運動を指導することが重要であり、階段昇降などの施設生活では行う機会の少ない動作も取り入れていく必要があると示唆された。