抄録
【目的】 我々は第37回日本理学療法学術大会において、レントゲン撮影像を基に変形性股関節症(以下変股症)の骨盤形状と股関節可動域の関係について報告した。本研究は、変股症のレントゲン評価に股関節の変形部のみに着眼するのではなく、骨盤形状の評価が股関節の可動域や姿勢を反映し、股関節疾患の理学療法評価のエビデンスとして有用かを究明することである。今回は変股症の手術既往の無い保存治療症例を対象に病期分類し、骨盤形状と股関節可動域ついて調査し姿勢との関係について考察したので報告する。
【対象】 当院整形外科を受診し変股症と診断された女性41例(疼痛側は両側例7例、片側例34例)を対象とした。病期内訳は、末期・進行期(進行末期群)が18例、初期・前股関節症(前初期群)が23例であった。年齢は19歳から71歳、平均45.7±13.14歳であった。
【方法】 対象症例のレントゲンフィルムは、整形外科受診時に医師の処方により撮影された、荷重位の股関節正面像を使用した。計測法は第37回学術大会と同様に 1、左右閉鎖孔の縦径最長と横径最長の縦径/横径の比 2、恥骨結合からの垂線を基準に、左右骨盤腔の最大径を計測し骨盤腔の幅の左右比 3、骨盤腔の最大径の位置を、恥骨結合からの垂線を基準に恥骨結合からの高さを計測した。また対象症例の股関節可動域(屈曲・伸展・内旋・外旋)を計測した。これらの計測結果から骨盤形状と股関節可動域の関係を病期群ごとに検討した。
【結果】 閉鎖孔比は前初期群0.756、進行末期群0.707であり、進行末期群の方が形状は扁平化していたが二群間に有意差は認めなかった。骨盤腔の左右の比は、患側骨盤腔が進行末期群の方が狭かった(p<0.05)。骨盤腔の高さは、二群間に差は認めなかった。病期と股関節可動域の関係は、屈曲・伸展・内外旋とも、進行末期群が有意に小さかった。次に骨盤形状と可動域の関係は、回旋可動域が進行末期群になるほど内外旋は患側と健側で相反する傾向にあり骨盤幅と回旋角度に相関がみられた。
【考察】 今回の結果から、閉鎖孔の形状と可動域との間には強い相関は見られなかった。しかし病期の進行に伴い、骨盤腔の幅は患側が狭くなり内外旋角度が相反していた。これは股関節の回旋角度の相反を骨盤の回旋で代償しているため、立位姿勢時に骨盤の捻れがレントゲン像に反映していたと考えられる。臨床上変股症の評価にレントゲン像から股関節の変形の情報を得ているが、閉鎖孔・骨盤腔の形状も評価することで股関節の可動性と姿勢の評価にもなりうる事が示唆された。今後はEBMに基づく変股症の理学療法評価として確立していくためにさらに検討していきたい。