理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 786
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骨・関節系理学療法
投球障害肩における肩甲骨動作解析
投球時肩痛の発生に影響を与える因子
*瀬下 寛之宇賀神 直田村 貴行森田 光生大高 洋平辻野 昭人伊藤 恵康
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抄録
【はじめに】繰り返しの投球動作により肩痛を来たす投球障害肩のなかには、肩関節後方に疼痛を認めるものがある。この事象は肩甲上腕関節後方の拘縮が肩痛を引き起こしている可能性を示唆している。今回、肩関節水平面上での肩甲骨変位を観察することで、投球障害肩における肩痛の発生因子について検討したので報告する。
【対象及び方法】肩・肘痛を主訴として来院した野球選手のうち理学療法の対象となった20名を投球障害群、肩痛を認めない高校野球部員20名を非投球障害群、野球歴のない健常成人10名を健常群とし対象とした。方法は肩甲骨変位を観察するため肩甲棘内縁、肩甲骨下角を体表指標点とし肩甲棘内縁-脊柱間距離、肩甲骨下角-脊柱間距離及び肩甲骨内縁角度(肩甲棘内縁と肩甲骨下角を結ぶ直線と脊柱をなす角度)を計測した。測定肢位は肩関節水平屈曲0度及び90度とし、投球側と非投球側でそれぞれ計測した。さらに各パラメーターにおける肩関節水平屈曲0度での測定値に対する、90度での測定値を変化比率として算出した。
【結果】肩関節水平屈曲0度から90度に変位した際の各測定値の変化比率について、投球障害群-非投球障害群では肩甲棘内縁-脊柱間距離(投球障害群1.59±0.39、非投球障害群1.25±0.16)、肩甲骨下角-脊柱間距離(投球障害群1.88±0.38、非投球障害群1.33±0.17)で投球障害群が有意に大きかった(p<0.001、p<0.001)。肩甲骨内縁角度(投球障害群1.05±0.42、非投球障害群1.48±0.49)は、非投球障害群が有意に大きかった(p<0.01)。投球障害群-健常群では肩甲骨下角-脊柱間距離(投球障害群1.88±0.38、健常群1.27±0.24)で投球障害群が有意に大きかったが(p<0.001)、肩甲棘内縁-脊柱間距離及び肩甲骨内縁角度では有意差は認められなかった。非投球障害群-健常群では肩甲骨内縁角度(非投球障害群1.48±0.49、健常群1.12±0.34)は、非投球障害群が有意に大きかったが(p<0.05)、肩甲棘内縁-脊柱間距離及び肩甲骨下角-脊柱間距離では有意差は認められなかった。
【考察】今回の調査で、非投球障害群及び健常群が肩関節水平屈曲に対して肩甲骨は外転・上方回旋へ変位していたが、投球障害群では肩甲骨は外転方向へのみ変位を示した。これは他群に比べ投球障害群では、肩関節後方構成体が全体として過度な緊張状態にあることを示唆している。つまり肩関節後方構成体への過剰な負担がかかり続ける結果として肩甲上腕関節後方の拘縮が出現し、投球時肩痛が生じてくるものと推察される。肩関節後方構成体への過剰な負担がかかる要因として、本来投球時において肩関節は投球面の中で上腕の肢位を保持して移動していくのに対し、体幹と上腕が別々に動く手投げ傾向にあることが一因として考えられる。つまり適切なストレッチングの指導と適切なフォームの指導、さらに選手自信がセルフケアとして実践できるような教育の重要性も示唆された。
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© 2004 日本理学療法士協会
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