理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 799
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骨・関節系理学療法
肩腱板修復術後の筋力に関する検討
*佐々木 伸一嶋田 誠一郎北出 一平小川 真裕美川原 英夫小林 茂馬場 久敏
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キーワード: 腱板, 筋トルク値, 肩関節
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抄録
【目的】肩腱板修復術後の筋力について、prerotational glide(以下pre R.G)、rotational glide(以下R.G )、postrotational glide(以下post R.G)の3相における筋トルク値の回復について検討した。
【対象】2000年6月から2002年6月までに腱板損傷にて手術を行い、6ヶ月以上追跡できた11例(男性2例、女性2例)である。平均年齢61.8±9.9歳 手術側は、右5例 左6例、術後追跡期間11.7±2.9ヶ月である。
【方法】肩の筋力測定には、バックレストが110°の椅子に体幹と骨盤をベルトにて固定し、測定機器CybexII+を用い肩屈曲と外転筋力を測定した。入力棹の軸は、肩90°挙上位と水平挙上位で肩峰の高さとし、入力棹は90度挙上し肘伸展位で把持させた。ダイナモメータの回転速度は、60°/秒とし内外旋中間位で測定した。測定に際し被検者には、2~3回のウォーミングアップを行い「できるだけ早く腕を動かすように」と口頭で指示し3回測定した。
肩屈曲トルク値は、pre R.Gとして伸展45°から屈曲60°までの最大トルク値と発揮角度R.G として屈曲80°から120°までの最小トルクと角度、post R.Gとして屈曲135°から180°までの最大トルク値と角度を計測した。肩外転トルク値は、pre R.Gとして外転0°から60°までの最大トルク値と発揮角度、R.G として外転80°から120°までの最小トルクと角度、post R.Gとして外転135°から180°までの最大トルク値と角度について計測した。
【結果】肩屈曲トルクは、pre R.Gで患側3.9±1.4Kgm、健側4.2±1.4Kgm、 R.Gで患側1.9±.0.8Kgm、健側2.5±0.8Kgm、post R.Gで患側2.3±1.0Kgm、健側2.8±1.1Kgmで、患側および健側ともR.Gと post R.Gはpre R.G より有意(p<0.01)に低く、また患側RGは、健側RGに比して有意(p<0.01)に低値であった。
 肩外転トルクは、pre R.Gで患側2.3±1.1Kgm、健側2.3±0.8Kgm、R.Gで患側0.9±.0.6Kgm、健側1.4±0.5Kgm、post R.Gで患側1.2±0.7Kgm、健側1.9±1.0Kgmであった。患側および健側ともR.Gと post R.Gはpre R.G より有意(p<0.01)に低く、またRGとpost R.Gでは、患側が健側に比して有意(p<0.01)に低下していた。
【考察】腱板修復術後の筋力回復は、pre R.G に比してR.Gやpost R.Gで不十分であり、損傷による廃用性障害や腱板の機能回復の遅延などが残存しているものと推察された。術後の理学療法は、長期にわたりR.Gやpost R.Gでの筋力強化の必要性が示唆された。
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© 2004 日本理学療法士協会
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