抄録
【はじめに】
橈骨遠位端骨折(以下、遠位端骨折)は頻度の高い骨折であり、その予後については整復後の骨アライメントにより大きく左右されるといわれている。今回、運動療法未施行の症例に対し、レントゲン計測値などの値がROMに関与してくるかを検討したので若干の考察をふまえ報告する。
【対象】
平成12年度に当院受診し、遠位端骨折と診断された88名90手のうち、追跡調査可能であった31名31手(男性16名、女性18名)を対象とした。平均年齢は40.2±19.7歳であり、骨折型による内訳はColles骨折23例、背側Barton骨折5例、Smith骨折3例であった。
【方法】
各症例に対し、最終手関節ROM(掌屈+背屈)が100°以上の症例を良好群、100°未満の症例を不良群とし比較した。レントゲン計測値は、ギプス除去後の各値を計測し、骨折時のX-Pに対してFrykman分類を用いた。統計学処理としてスチューデントのt検定を用い、有意水準は5%とした。
【結果】
31手のうち良好群は16手(男性11手、女性5手)であり、不良群は15手(男性5手、女性10手)であった。平均年齢は良好群29.6±16.5歳、不良群51.4±16.6歳にて両群間に有意差を認めたが、受傷より終了までの期間は、良好群11.3±4.4週、不良群12.9±7.6週にて有意差はなかった。また、Frykman分類において、良好群ではType1:25.0%、Type2:25.0%、Type3:13.5%、Type4:6.3%、Type5:6.3%、Type6:6.3%、Type7:6.3%、Type8:13.5%であった。一方、不良群では、Type1:6.1%、Type2:20.0%、Type3:20.0%、Type4:13.3%、Type5:6.1%、Type6:20.0%、Type8:13.3%であった。X-P計測値に対しては、radial inclinationは良好群24.8±4.0°に対して不良群20.5±5.9°と有意に不良群が低値を呈していた。しかしulnar length、volar tilt、RSA、RLA、SLAに対して、有意差は認められなかった。
【考察】
不良因子として、年齢・性別・radial inclinationのみ有意差を認め、受傷時の骨折型、手根アライメントは必ずしも予後に影響しない事が示唆された。要因の一つとして高齢な女性が多い事より受傷前からの活動性低下、加齢によるremodeling機能の低下や、支持組織の脆弱化が考えられる。一般的にradial inclinationは手関節の安定性に関与していると報告されている事により、不良例は手関節の不安定性を基盤とした疼痛や手関節靭帯の中の特に、背側に位置する橈骨舟状骨靭帯、掌側に位置する橈側側副靭帯、橈骨舟状月状骨靭帯、橈骨舟状有頭骨靭帯などの走行変化、固定による癒着が関与し、手関節ROM制限に繋がった要因ではないかと考えられた。