抄録
【目的】
近年、プロ野球やJリーグなどの影響から幼少期からの競技スポーツの開始がスポーツ外傷の観点からは問題視されている。一方で、こどもの運動不足が叫ばれており、成長過程にあるこどもたちの中に転んだときに手が出ず、顔面の擦過傷を負う事も頻発しているという報告も見られる。
今回、小学生のこどもたちのスポーツ外傷の発生要因を検討するために、乳幼児の運動発達時期を中心に調査したので若干の考察を加えて報告する。
【方法】
対象は、受診群として平成15年9月末から10月末までの1カ月間に県内のスポーツ外傷を専門とする整形外科9ヵ所を受診し、アンケート調査に協力を得た小学生(年齢6~12歳)117名中、有効回答を得た107名(男児80名、女児27名)とした。コントロール群は、某小学校全校生徒690名中、有効回答の得られた482名(男児226名、女児256名)とした。
アンケート調査の内容は、学年、年齢、性別、身長、体重、現在行っているスポーツ種目、その開始年齢、乳幼児期の運動発達として、定頚、一人座り、四這い、つかまり立ち、独歩の獲得月齢とした。さらに受診群は、医師からの診断名を加えた。
【結果】
受診群は、平均年齢10.40±1.49歳、身長141.92±11.06cm、体重35.57±8.85kg。コントロール群は、年齢は8.89±1.80歳、身長132.09±13.90cm、体重29.71±8.46kg。
乳幼児の運動発達時期の平均獲得月齢は、受診群では、定頚2.70±0.79カ月、一人座り6.36±1.30カ月、四這い6.40±1.41カ月、つかまり立ち8.61±1.44カ月、独歩11.36±1.39カ月であった。コントロール群では、定頚3.01±0.69カ月、一人座り6.67±1.15カ月、四這い7.22±1.58カ月、つかまり立ち8.55±1.56カ月、独歩11.82±1.82カ月。受診群とコントロール群との間には、定頚(p<0.01)、一人座り(p<0.05)、四這い(p<0.01)、独歩(p<0.01)に有意差が認められ、受診群の方がやや獲得月齢が早かった。しかし、つかまり立ちでは有意差は認められなかった。
【考察】
小学生のこどもたちは、身体的にも精神的にも発達過程にある。また、スポーツなどの運動技能の習得時期でもある。今回の統計学的に有意に受診群が乳幼児期の運動発達が早く、またスポーツ種目においても、野球やサッカー、バスケットといった競技種目に関わっており、スポーツ外傷の発生に影響を及ぼす可能性が示唆された。しかし、乳幼児期の運動発達は個人差が大きく、今回の調査からは関連を断定することは難しいと考えられる。今後調査項目をさらに吟味し詳細な検討を重ねていくことで、こどもたちのスポーツ外傷の予防に役立てたいと考える。