老年歯科医学
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臨床報告
嚥下機能低下を有する精神障害患者に生じた義歯誤飲を嚥下造影検査で発見した1症例
小林 直樹東 倫子坪井 千夏水口 一
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2026 年 41 巻 1 号 p. 37-42

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抄録

 可撤性義歯をはじめとする補綴装置の誤飲・誤嚥は,窒息や誤嚥性肺炎など生命予後に影響を及ぼす医療安全上の重要課題である。特に高齢者や精神障害,認知機能低下を有する患者では,リスク認知や自覚的訴えが困難な場合が多く,診査・診断および補綴装置管理における慎重な対応が求められる。今回,嚥下造影検査(VF)を契機に,長期間咽頭内に残留していた不顕性の誤飲義歯が発見された精神障害患者の1例を報告する。

 患者は56歳男性で,知的発達症,てんかんの既往を有した。初診時に流涎,発話不明瞭,舌の突出を認め,他院作製の上顎総義歯は不使用で保管され,下顎義歯は口腔内に認めなかった。食べこぼしやむせを認めるため摂食嚥下機能評価目的でVFを施行したところ,中咽頭部に部分床義歯の嵌頓を認めた。耳鼻咽喉科にて全身麻酔下で摘出術を施行し,術後は流涎の軽減および発話明瞭性の改善を認め,重篤な合併症は回避された。

 本症例は,意思表出困難を背景に誤飲の発見が遅れ,義歯が長期間咽頭内に残留していた点に特徴がある。入院時診療情報に義歯紛失の記載があったものの,入院中の歯科診療時に誤飲を想定できなかったことは課題であり,補綴装置紛失時には誤飲の可能性を常に念頭におく必要がある。本症例の特徴的な所見である意思表出困難や嚥下機能低下は高齢者においても散見できることから,高齢者医療においても画像検査を含めた包括的評価と多職種連携による適切な対応が医療安全上重要であると考えられた。

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