抄録
【はじめに】
スポーツ活動による腰痛の機能的な要因として、様々な運動器機能の低下に動作習慣の問題等が関連して、腰骨盤リズムの乱れを生じての発生が多い。
今回、腰痛を訴えた体幹運動と、股関節可動域、体幹・股関節周囲筋力、骨盤傾斜角度との関連について分析を試みた。
【対象】
腰痛を有する男子高校運動選手19名とした。体幹運動と痛みの発生の関係から、体幹屈曲時に痛みを訴えたF群12名(15.5±0.7歳)と、体幹伸展時に痛みを訴えたE群7名(16.1±0.6歳)に分類した。
対照群(C群)は腰痛のない同校運動選手20名(15.5±0.7歳)とした。
【方法】
1.股関節関節可動域:SLR、伸展、内旋、外旋
2.股関節筋力(MMT):屈曲、伸展、外転
3.腹筋筋力(体幹筋持久力評価法:石田らの方法による)
4.骨盤傾斜角度:安静立位時の矢状面の骨盤傾斜角度(上前腸骨棘と上後腸骨棘の結線が水平線と矢状面でなす角度)
以上の4項目を測定し、3群間で比較した。検定は1、2、4はStudentのt検定を、2はMann-Whitney検定を用いた(p<0.05)。
【結果】
1.関節可動域 SLR:F群65.0±13.0、E群72.1±3.9、C群67.5±9.2、伸展: F群12.9±4.0、E群13.6±5.6、C群12.0±5.0、内旋: F群33.1±11.6、E群27.1±7.6、C群32.3±9.7、外旋:F群59.6±5.8、E群60.7±6.1、C群59.5±7.7 C群との比較ではF群でSLR、E群で内旋が制限の傾向にあった。
2.股関節筋力 筋力低下(MMT4以下)がみられた者が、屈曲:F群12名(100%)、E群6名(86%)、C群14名(70%)、伸展:F群9名(75%)、E群3名(43%)、C群11名(55%)、外転:F群11名(92%)、E群4名(57%)、C群13名(65%) C群との比較では伸展筋力でF群が、外転筋力もF群が有意に低かった。
3.腹筋筋力 F群105.9±72.5秒、E群109.4±67.9秒、C群137.2±102.6秒であり、F群とE群はC群よりも劣る傾向にあった。
4.骨盤傾斜角度 F群6.6±3.5度、E群8.2±7.5度、C群8.0±5.2度であり、3群間で差はみられなかった。
【考察】
体幹屈曲時に痛みを訴えたF群はSLR制限、股関節伸展・外転筋力と腹筋筋力低下があり、伸展時に痛みを訴えたE群は内旋可動域制限、腹筋筋力低下があったが、股関節可動域、腹筋筋力に関しては傾向が得られたのみで単独での強い相関はなかった。各要因の複合が腰痛の発生に関係していることが推察される。今後、対象数を増し各要因の相互関係と腰痛に至るメカニズムについて分析を進めていきたい。