理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 958
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骨・関節系理学療法
体軸回旋系からみた歩幅に対するアプローチの検討
自動体幹テストを用いた評価と治療
*城下 貴司野村 紗弥可松浦 武史
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抄録
【はじめに】
我々は、自然歩行動作において入谷の考案した自動体幹テストが歩幅の臨床的な評価に有効的な事、上部体幹の回旋系は歩幅に影響する事など主に評価や運動学的な事を報告してきた。今回はそれらの評価を用いた歩幅に対するアプローチおよび歩行速度の影響等についても検討したので以下に報告する。
【方法および対象】
対象は健常者12名(男性:5人、女性:7人)、平均年齢38.5±12.0歳で、方法はまず自動体幹テストを計測し次に左右交互に2mmのヒールパッド(以下HP)を処方しそれぞれの自動体幹テストを計測しその左右の偏差値を算出。さらに同様の条件にて歩幅も計測。機材はgait rite(ヘンリージャパン)を使用して、5m自然歩行を3回裸足にて行い左右の歩幅の偏差値を算出。さらに、速足歩行での歩幅の計測も行った。解析方法はまず自動体幹テストと歩幅との相関関係の確認。各側のHP施行前後での自動体幹テストの変化を対応のある平均値の差の検定(危険率1%)を、自然歩行や速足歩行の歩幅についても同様に解析を行った。尚自動体幹テストは可動域の制限側と非制限側に、歩幅はけり足(歩幅が高値側)と軸足(歩幅が低値側)にそれぞれ分けて解析した。
【結果】
統計処理の結果、自動体幹テストと歩幅との関係は、r=0.899(n=12.p<0.01)と高い相関となった。自動体幹テストの制限側では、非制限足のHP(例:右回旋が制限ならば左足)で有意に高値を示し、非制限側では非制限足のHP(例:左回旋が非制限側なら左足)で可動域が有意に低値を示した。歩幅に関しては非制限足にHPをすることで軸足側は有意に高値を、けり足側は有意に低値を示した。速足歩行でも軸足側が有意に高値を、けり足側が有意に低値を示した。その他有意差は認められなかった。
【考察】
今回の実験では自動体幹テストと自然歩行の歩幅との関係の再確認が認められ、自動体幹テストの制限側と反対足にHPを処方することで可動域制限の改善と反対側の可動域を制御した。歩幅については軸足がけり足となったりその状態に近づくような現象が認められた。自動体幹テスト、歩幅共に左右の可動域や歩幅の偏りを減少する効果がHPには認められた。しかし統計処理上は認められなかったがHPにより自動体幹テストで改善されたにもかかわらず、歩幅は改善されない症例が何人か認められた。また速足歩行では軸足とけり足の逆転化現象が多くの症例に認められたのは興味深かった。
以上から動作を静的な評価でみるという自動体幹テストの限界を感じる部分もありながらも簡便で有効的な評価の一つであり、HPは上部体幹の回旋系と歩幅に影響するのではないかと考えている。
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© 2004 日本理学療法士協会
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