理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 971
会議情報

骨・関節系理学療法
internal impingement症例の単純X線検討
*甲斐 義浩原 正文浦辺 幸夫道喜 昭弘松本 俊二高木 雅得
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】
 肩関節の投球障害の一つに腱板関節面断裂(以下JSTと略す)がある。この原因としてWalchら(1992年)はposterosuperior glenoid rim impingement syndromeを提唱した。山口・原らは後上方関節唇損傷部とJST部が接することを鏡視下に確認し、その手技をarthroscopic internal impingement test(以下AII testと略す)とした。今回我々は、後上方関節唇損傷部とJST部が接触するinternal impingementの病態についてレントゲンを用いて考察した。
【対象および方法】
 対象は、2002年8月から2003年8月までに当院で投球障害に対し鏡視下手術を行った症例の中でAII test陽性と判断された症例20名である。単純X線撮影方法は、立位にて上肢を最も楽な挙上位に保持させ、手掌を前額面に平行になるように診療放射線技師が撮影し、それをzero position撮影とした。X線上、肩甲棘長軸と上腕骨長軸が一致するものをzero positionとし、A群とした。肩甲棘長軸延長線より、上腕骨長軸が末梢側にて上方に位置するものをB群、末梢側にて下方に位置するものをC群、上腕骨頭同心円中心からの垂線が肩甲骨窩下縁の外に存在するものをS群に分類した。その後、大結節をマーキングし、補助線として肩甲棘長軸との平行線を肩甲骨臼蓋上縁に接して引いた(以下GT-lineとする)。GT-lineに対して、大結節が上方に位置するものをoverとし、一致するものをneutral、下方に位置するものをunderとして分類した。
【結果】
 AII test陽性を確認した症例20名のzero positionの分類A・B・C・S群にて、分類ではA群3名(15%)、B群4名(20%)、C群4名(20%)、S群9名(45%)であった。次にGT-lineはA群3名中neutral 1名(33%)、under 2名(67%)、B群4名中under4名(100%)、C群4名中neutral 1名(25%)、over 2名(50%)、under1名(25%)、S群9名中under 9名(100%)であった。20名中16名(80%)がGT-line underであった。
【考察】
 internal impingementを生じている症例の80%で大結節の位置がGT-lineより下方に位置していた。また、当院で用いているzero positionの分類のS群が全例の45%と多く、そのS群の全例で大結節がGT-lineより下方に位置していた。このことは、zero positionでの大結節と肩甲骨臼蓋の位置とinternal impingementとに関連を示唆するものであり、GT-lineはその評価の1つとして有用であると推察された。

著者関連情報
© 2004 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top