理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 972
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骨・関節系理学療法
肩後方構成体ストレッチングによる肩内旋可動域の変化
*大橋 朗飯田 博己平井 達也岩本 賢岩堀 裕介
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抄録

【目的】
 野球選手の投球側肩関節における90度外転位での内旋可動域(以下、2nd内旋)の減少は、肩後方構成体の伸張性低下に由来し、過度なものになると投球障害の一因になり得ると言われている。我々は、2001年に少年野球チームの選手を対象にメディカルチェックを実施し、すでに2nd内旋の減少が認められることを第19回日本私立医科大学理学療法学会にて報告した。以後この伸張性低下の改善のために、同チームの選手には肩後方構成体ストレッチング(以下、ストレッチング)の指導を定期的に行なってきた。今回ストレッチングによる2nd内旋の即時的および長期的変化を調査し、若干の知見を得たので報告する。 
【対象と方法】
 研究1:即時的変化の調査。対象は2001年のメディカルチェック後のフィードバックに参加した同チームの選手28名とした。方法は投球側肩に対しセルフストレッチングを施行させ、非投球側と比べた可動域差(以下、2nd内旋差)をストレッチング前後で比較した。
研究2:長期的変化の調査。対象は2001年から2003年まで毎年メディカルチェックを実施した同チームの選手のうち3年間継続して調査可能であった19名とした。方法は毎年のメディカルチェック時に調査した2nd内旋差を年毎に比較した。尚すべての選手及び指導者には毎年メディカルチェック時もしくはフィードバック時に、適切なストレッチング方法の確認(肩後方の伸張感、施行時間、施行頻度など)と指導を実施した。
【結果】
 研究1:ストレッチング前の2nd内旋差の平均は14.8±8.0度、ストレッチング後は12.3±8.9度であった。ストレッチング前と後に有意な差を認めた(p<0.01)。
研究2:2001年時の2nd内旋差の平均は18.2±9.6度、2002年時は11.3±8.3度、2003年時は7.1±6.7度であり2001年と2002年(p<0.05)、2001年と2003年に有意な差を認めた(p<0.01)。
【考察】
 我々は2001年に少年野球チームを対象にメディカルチェックを実施し、すでに小学生の時期から肩後方構成体の伸張性低下を反映する2nd内旋の減少を示す選手がいることを明らかにした。この時期から可動域制限を改善しておくことは、現時点のみならず将来の野球活動における投球障害の予防に繋がると考えられる。今回の結果より、セルフストレッチングによる2nd内旋差の即時的改善はわずかであったが、長期的には大幅な改善が認められた。以上のことより、少年期での2nd内旋差は、適切なセルフストレッチング方法の指導とその手技の継続により、大幅に改善する可能性があるものと推察された。またより適切な実施を意図して、指導者に対する指導を行なってきたことも長期的な改善に関与したものと思われた。

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© 2004 日本理学療法士協会
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