抄録
【目的】
関節リウマチ(以下RA)は、関節変形や疼痛により著明なADL障害を引き起こす代表的な疾患である。特に下肢に関しては、膝関節屈曲角度が十分でないと椅子からの立ち上がりや階段昇降などの動作が困難になる。そのため、当院ではRAに対するTKA後のROMの目標を伸展0°、屈曲120°に設定している。しかし、同様のリハビリテーション(以下リハ)を行なっているにも関わらず、屈曲120°を獲得できない症例を経験することも少なくない。そこで今回我々は、TKA後入院中のROMの経過を追跡し、退院時屈曲120°獲得群(以下獲得群)と不可群の両群の特徴について検討した。
【方法】
TKA後のRA患者19例(男性3名、女性16名、平均年齢62歳、)の術前から退院時までの屈曲ROMを毎日測定し(平均21日間)、同時に運動時痛をVASにて評価した。そのデータを、獲得群5例、不可群15例に分け、両群の特徴について検討した。
【結果】
120°獲得群の術前屈曲角度は平均139°、不可群は125°であった。また、120°獲得群は、術後1日目より徐々に改善が緩やかとなる円滑な曲線を描いて経過し、9日目で平均115°を獲得した。その後、15日目で120°を獲得していた。一方、不可群は常に獲得群のROMを下回り、更に、改善を示す曲線は、増悪と改善を繰り返す不正な曲線を呈していた。疼痛については、両群共に術後1日目より増悪と改善を繰り返しながら全体的には徐々に改善する傾向を示し、獲得群は術後17日目に全例VASにて0を示した。不可群は、常に獲得群よりも疼痛を強く自覚していた。
【考察】
RAのTKA術後のROM拡大時には、大腿四頭筋や大腿筋膜張筋の伸張痛を訴えることが多い。特に、術後早期には創部痛・炎症による疼痛が加わり、更に術部を動かされるという恐怖感も存在するために術部周辺のリラクゼーションが困難になり、よりROM拡大に難渋する場合が多い。しかし、本研究において、120°獲得群は術直後より平均9日間を要して特にROMの改善を示していることに加え、当院では術後1日目よりCPM、3日目より疼痛自制内での平行棒内歩行、3週間で階段昇降を獲得して退院するという早期リハを実施していることからも、術直後からおよそ一週間の期間に、可及的速やかに各種運動療法・物理療法・ポジショニング指導などを行なうことで疼痛軽減を図り、ROM拡大に努めることの重要性が示唆された。
【まとめ】
RA患者におけるTKA後の屈曲可動域の改善経過を調査した。退院時屈曲120°獲得群は、術後平均9日目まで大きな改善傾向を示し、15日目で120°を獲得していた。不可群は、術直後より改善と増悪を繰り返し常に獲得群を下回りながら推移したが、退院時屈曲120°には至らないものの平均110°を獲得していた。術後早期からのリハの重要性が示唆された。