抄録
【はじめに】
足底板は扁平足障害をはじめとする様々な疾患に対して臨床で用いられている。この足底板使用によりスポーツ動作における“構え”姿勢の改善を臨床上良く経験する。これは下腿前傾角度(足関節背屈)の増加により生じており、この足底板の効果のひとつと我々は考えているが、この改善の機序は明らかではない。そこで荷重位での足関節背屈との関連に着目し、内側縦アーチの補正により距腿関節の適合性に影響を及ぼしていると考え、内側縦アーチを支持するテーピング(以下、テープ)による下腿前傾角度と距骨滑車の適合性の変化を比較検討することを本研究の目的とした。
【対象】
実験内容を十分理解し、協力を得られた健常な成人12名(男性10名、女子2名、年齢28.0±8.3歳、身長166.1±6.3cm、体重62.6±7.2kg)のうち足関節、足部に外傷の既往及び現症を持たない16足を対象とした。
【方法】
(1)下腿前傾角度
測定肢位は対象となる足部を前方へ踏み出し、膝関節及び股関節の屈曲を伴い下腿を最大限に前傾させた足関節最大背屈位にて行った。テープ施行前後で下腿前傾角度と荷重量を計測した。下腿前傾角度の計測には電子デジタル傾斜計(CYBEX, EDI-320)を用いた。
(2)距骨滑車適合性
上記の測定肢位にてテープ施行前後の足部のX線撮影を放射線技師が行った。得られた側面像から脛骨天蓋の前縁Aと後縁Bを結ぶ線(AB)の平行線を距骨滑車に引き、その接点(M)のAB上における割合(BM/AB×100)を算出した。この値が50%に近いほど適合性が高いと定義した。なお、X線撮影時の下腿前傾角度と荷重量はテープ前後で同一とした。統計処理は、測定値の平均を算出し、t-検定にて危険率5%未満(p<0.05)を有意差としている。
【結果】
距骨滑車適合性は裸足57.5±6.5%、テープ55.8±5.6%であり、テープ施行時において有意に高い値が得られた(p<0.05)。しかし、テープの施行前後で下腿前傾角度に有意な差は認められなかった。
【考察】
今回はテープの施行前後で下腿前傾角度に有意な差は認められなかった。しかし、自覚的な前方のつまり感の改善を訴える例も多く、距骨滑車適合性に改善の傾向が見られたことは仮説を支持する結果と思われる。
近藤らは、荷重位における下腿前傾は距腿関節の背屈運動のみによるものではなく、舟状骨、踵骨、距骨の足部変化を伴うことをX線像から確認している。本実験ではテープを用いて舟状骨の降下と踵骨の回内を制動した。アーチ形状の保持は過度な距骨の内転や回内の抑制に寄与し距腿関節面の応力集中の改善に働いたと考える。今後はさらに舟状骨や踵骨のアライメント変化と下腿前傾角度、距骨滑車適合性との関連性を調査したい。