理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1011
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骨・関節系理学療法
機能的足関節不安定性を有する症例の振り向き動作時の姿勢制御の特徴
位相面解析を用いて
*木藤 伸宏新小田 幸一島澤 真一弓削 千文
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抄録
【目的】機能的足関節不安定性(以下、FI)は捻挫や骨折後などに認められ、変形性足関節症へ移行する見逃してはならない症状である。足関節不安定性を訴える動作としては、振り向き動作、ストップ動作、方向転換である。よってこれらの動作での姿勢制御の特徴を捉える事でFIの特徴を抽出できる可能性がある。本研究の目的はFIを有する症例にて、立位振り向き動作時の足圧中心軌跡を位相面にて解析し、姿勢制御の特徴を抽出することで臨床的指標の一つとなりえるか否かを検討することである。本研究で用いた位相面解析とは工学分野の過渡応答特性の評価に用いられている。出力が非線形・かつ閉ループの動きをする場合非常に有効な手法である。位相面によって次のような系の解釈が得られる。1:軌跡が大きく広がるものは、変位とその変化速度がともに増大するので不安定である。2:位相面の座標をあらわす横軸上のある一点に収束すれば安定である。3:軌跡が閉曲線となり、そのサイクルにそって動作が繰り返されれば、リミットサイクルとなり準安定状態である。
【方法】被験者は下肢に疾患がない24歳健常女性、右足にFIを有する27歳男性、両足にFIを有する29歳女性の計3名である。FIを有する足関節は内反ストレステスト、前方引き出しテストともに陽性である。まずアニマ社製の重心動揺計上で左右均等荷重した立位をとり、その後右下肢に体重を移し振り向き動作を行う。もとのニュートラル肢位に戻り、左下肢に体重を移し振り向き動作を行う。それを2回繰り返した。一連の課題動作は40秒間で施行した。動作時の足圧中心軌跡の左右および前後方向の座標を横軸に、各方向の1階微分値(速度)を縦軸にとり位相面上に表した。前後方向についても同様に位相面に表した。
【結果】健常足では左右方向は振り向き動作時にリミットサイクルを描き、位相面上のほぼ一点に収束する軌跡を描いていた。前後方向は足長の中心点を中心にしてリミットサイクルを描いていた。FIを有する被験者では、振り向き動作時、左右方向ではリミットサイクルは認められず、位相面上のほぼ一点に収束する軌跡を描き、前後方向については足長の広い範囲にわたってリミットサイクルを描き、加えて速度変動幅が増大していた。
【考察】健常足では振り向き動作時に冗長性を持ちながら非常にリズミカルな姿勢制御を行っている。一方、FIでは冗長性が少なく、安定性が得られるほぼ一点に素早く収束する傾向が認められた。これは不意な外乱や予想外の姿勢制御が要求された場合、対応が困難な状態にあると推察できる。
【まとめ】立位振り向き動作時の足圧中心軌跡に位相面解析手法を用いることで、FIを視覚的に捉える事が可能であり、さらにその回復過程や装具の有効性を判定するための客観的評価法の一つとして有用であると思われる。
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© 2004 日本理学療法士協会
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