抄録
【はじめに】臨床上、下肢に機能障害を有する症例において足趾機能不全を有する症例を多く経験する。外反拇趾や足関節捻挫、変形性膝関節症などのさまざまな下肢の症例で、足部4、5趾の筋力低下、可動域制限を有することを経験する。4、5趾の機能不全は身体重心の移動範囲を狭め、姿勢を制御するため過剰な筋緊張を生じさせ、膝痛、腰痛などの2次的な痛みにつながる。足趾のなかでも4、5趾の評価、治療は重要であると考える。しかし、足趾の1趾ごとの筋力を評価する妥当な評価器具が存在しない。そこで今回、足趾の1趾ごとの筋力を検討するための基礎研究として、母趾の筋力と2~5趾の筋力に分け、床を押す筋力(足趾支持力)を測定するために足趾支持力測定器(以下測定器)を試作した。その再現性を検討したので報告する。
【測定器について】測定にはアニマ社製デジタル徒手筋力計μTasMT-1(0.1kg以上80kg未満測定可能、0.1kg単位で表示)を使用した。測定器は木製の板で足趾MP関節より近位の足底を乗せる基礎板と、全趾(1~5趾)、母趾、2~5趾の3種類の足趾板を作製した。基礎板とそれぞれの足趾板を組み合わせ、徒手筋力計を各足趾板の下に入れ平らになるよう作製し測定した。
【対象と方法】対象者は、下肢に愁訴が認められなかった健常者10名(男性4名、女性6名)、平均年齢は23.5±1.3歳であった。利き足は10名全員右足であった。筋力の測定方法は検者1人が測定を行い、右の全趾、母趾、2~5趾、左の全趾、母趾、2~5趾の順で3回繰り返し計測を行った。すべての施行において、力の入れ方を5本の足趾で板を押すように指示した。測定時、被験者は背もたれのある椅子に座り、膝関節屈曲90度、足関節底背屈0度で計測を行った。また代償運動を防ぐため踵部が浮かないよう検者が固定し、背部を背もたれから離さないよう指示した。再現性の検討方法は10名の右の全趾、母趾、2~5趾、左の全趾、母趾、2~5趾それぞれ3回の測定結果の級内相関係数を求めた。
【結果】右の全趾、母趾、2~5趾左の全趾、母趾、2~5趾それぞれ3回の計測による級内相関係数はr=0.922411、r=0.895605、r=0.884316、r=0.812447、r=0.877717、r=0.905212であり高い再現性を認めた。
【考察】足趾支持力測定器は簡便性を欠くものの、再現性は確認できた。臨床においても信頼できる評価と言える。今後、測定器を改良し、足趾を1趾ごとに筋力測定できるものを試作したいと考える。また、足趾の筋力は関節可動域に影響されることも考えられ、対象者数を増やし、意義のある研究を進めて行きたいと考える。