理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1019
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骨・関節系理学療法
膝関節外反肢位における動作解析と筋活動様相に関する考察
*加藤 茂幸浦辺 幸夫
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キーワード: 膝関節, 筋電, 動作解析
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抄録
【目的】
 膝前十字靭帯(ACL)損傷の受傷機転のひとつとして、膝関節の外反の強制が挙げられる。本研究は膝の外反位でACLが断裂するには膝周囲筋、特に大腿四頭筋の関与が大きいと推測し、膝関節屈曲時の外反位の筋電図を計測し、膝関節中間位と比較することで大腿四頭筋の筋活動がどの程度変化しているかを検討することを目的とした。
【方法】
 対象は膝関節に障害の既往がない、健康な学生(男性6名 、女性6名)、年齢22.5±1.7歳、身長165.4±5.9cm、体重59.5±9.4kg(平均値±SD)だった。計測は右下肢で行った。被検筋は大腿直筋、内側広筋、外側広筋、ハムストリングスとした。計測動作は前方へのステップ動作とした。動作中の表面電極を記録し、同時にデジタルビデオカメラにて撮影した。解析にはToMoCo-VMとTeleMyo 2400(NORAXON)を用いた。筋活動量の筋間および被験者間で比較するために各筋の最大随意収縮時の活動量に対する割合(%MVC)として表した。統計処理には、Post-hoc testとPaired t-testを用い、有意水準は危険率5%未満とした。
【結果】
 その結果、前方ステップ動作中に膝関節へ外側から外反力を加えた時の内側広筋の活動量は約125%MVC、大腿二頭筋の活動量は40% MVCだった。また、この時の内側広筋は、他の筋と比較して有意に活動量が大きかった(p<0.05)。
【考察】
 本研究では前方へ片脚を1歩踏み出させ、足底が床に接地すると同時に膝外側面から外反力を加え、強制的に外反肢位をとった時の膝関節周囲筋の筋電図および膝関節角度を計測した。内側広筋の活動は、ステップ動作中に外側から加えられた外力により、膝関節の内側が伸張されることに対する筋活動の反応と考えられ、その増加量はおよそ25%であった。ハムストリングスの活動は、脛骨の内外方向と前方移動力に対して動的安定性をもたらすが、その増加はわずかであった。外部刺激に対しての筋収縮の反応は、靭帯を含む関節内の軟部組織を保護することの助けとなるが、大腿四頭筋とハムストリングスの活動量の割合が重要であると思われた。
【まとめ】
 本研究では遠心性収縮を伴う基本的な動作のひとつであるステップ動作にて、外部刺激を加え、大腿四頭筋の活動増加量を把握することができた。
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© 2004 日本理学療法士協会
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