理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 491
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内部障害系理学療法
最大吸気筋力と換気パラメーターの関係
最大吸気筋力の臨床的意義
*横山 仁志笠原 美千代平木 幸治大森 圭貢卯津羅 雅彦
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キーワード: 最大吸気筋力, 換気量, weaning
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抄録
【はじめに】最大吸気圧(MIP)は,吸気筋力の代替値として活用されており,人工呼吸器からの離脱(weaning)の成否を推測するための重要な因子の一つである.その水準は,我々や他の研究者によって‐20cmH2O程度必要であることが明らかとなっている.しかし,MIPの大小が,どの程度他の指標に影響を与えているかは不明確である.よって,本研究では,MIPと他の換気パラメーターとの関係について検討し,MIPの臨床的意義を明らかにすることを目的とした.
【対象と方法】対象は,当院リハビリテーション部がweaning目的で介入した急性呼吸不全患者101例(平均年齢63.8±17.6歳,男性52例,女性49例)である.疾病内訳は,胸腹部外科術後42例,肺炎19例,心疾患11例,神経筋疾患9例,消化器疾患8例,熱傷6例,脊髄損傷6名であり,慢性肺疾患を有する症例や肺コンプライアンスが25ml/cmH2O以下,気道抵抗が15cmH2O/l/sec以上の症例は除外した.以上の症例を対象とし,診療記録より後方視的に,MIP,一回換気量(TV),TVを呼吸数(RR)で除したRR/TVを調査した.MIP(以後,絶対値で表示)は,人工呼吸器接続蛇腹を装着したChest社製VitalopowerKH-101を用いて,最大呼気位からの最大吸気努力によって生じる圧力を測定した.TVはガス流量計RM121を用いて,安定した呼吸状態における分時換気量を測定し,RRで除した値をTVとして採用した.RR/TVは,それらの値から算出した.また,測定時点でのweaningの成否についても調査した.そして,MIPと他の指標の関係についてPearsonの相関係数,χ 2検定を用いて検討した.
【結果と考察】MIPとTVの間には,直線的な相関関係は示さず,MIPが40cmH2O以上の症例においては,MIPの大小に関係なく,TVはほぼ一定で有意な相関を認めなかった(r=0.07).一方,40cmH2O未満の症例では,MIPの低下に伴ってTVは直線的に低下し,有意な正相関を認めた(r=0.53,p<0.01).同様に,MIPと換気効率を示すRR/TVとの関連においても,MIPが40cmH2O以上の症例では,有意な関係を認めなかった(r=0.11)が,40cmH2O未満の症例では,有意な負の相関を認めた(r=-0.52,p<0.01).特に30cmH2O付近からは,weaning成否のcutoff値である105を上回る症例が急増していた.さらに,40cmH2O未満の症例(n=76)を3つの筋力区分(39.9~30.0,29.9~20.0,19.9cmH2O以下)に分類し,weaningの成否についてみた.その結果,weaningの成功した症例は,順に20/20例(100%),28/36例(78%),7/20例(35%)と,低い筋力区分において有意に低値を示した(χ2=22.13,p<0.01).
 以上のことより,MIPが40cmH2Oを上回った場合には,一回換気量や換気効率にはあまり影響を与えないものの,その水準を下回った場合には強く影響を与えるものと考えられた.特にMIPが30cmH2O未満の症例では,weaningの成否に関連した顕著な換気量の低下や換気効率の悪化を生じることが推察された.
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© 2004 日本理学療法士協会
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