抄録
【目的】高齢者の肺炎は身体機能低下を招きやすく、寝たきり状態になりやすい。今回我々は肺炎を主体とした高齢患者において、肺炎によりどの程度ADL能力が低下し、その転帰はどうなるのかを調査した。またどのような患者がADL低下を起こしやすいのか、そのリスクになる入院前および入院中の因子について検討した。
【調査方法】1.2000年から2002年に肺炎の診断名で呼吸理学療法(排痰法、離床訓練、リコンディショニング)を処方された70歳以上の高齢患者50名、53エピソード中、他院に入院していた症例や、肺炎治療中に他の呼吸器疾患(ARDS、気胸等)を発症した症例、死亡した症例、元々寝たきりの症例を除いた32エピソード(男性21名、女性11名、平均80.8±6.9歳、平均治療期間20.3±12.6日)の入院前および退院時のADL能力を患者カルテより後方視的に調査した。また、それらの症例の転帰についても調査した。
ADL能力は4段階に区分した(1:寝たきり、2.ADL介助、歩行介助、3:ADL自立、歩行介助、4:両方とも自立)。ADLはトイレ動作、更衣、洗面を評価した。
2.上記症例中、肺炎発症前に重度の痴呆が無く、ADL、歩行が自立していた23名、24エピソードを退院時のADL維持群とADL低下群に分け、以下の因子の統計的検討を行った。年齢、肺炎発症前の活動性(外出可能or自宅内)とHOTの有無、入院時の病態重症度(APACHE II SCORE)、炎症所見(CRP)、酸素化指数(PaO2/FiO2)、栄養所見(アルブミン)、肺炎治療期間、離床開始日、精神症状(不穏、せん妄)の有無、挿管日数。
【結果】1.入院前ADL能力が4の患者29例中、退院時に17例のADL能力が低下した(4→3(4例)、4→2(7例)、4→1(6例))。入院前ADL能力が3の患者1例は2に低下し、2の患者は2例中1例が1に低下した。転帰は自宅退院が可能であったのは16例、リハビリ目的で転院したのは12例、療養目的で転院したのは4例であった。
2.ADL維持群とADL低下群との間に有意差があった項目は年齢(ADL維持群76.4歳、ADL低下群84.3歳:p<0.01)と離床開始日(ADL維持群4.4日、ADL低下群11.3日:p=0.01)のみであった。APACHE II SCOREはADL低下群で重症度が高い傾向が見られたが有意ではなかった(ADL維持群13.3、ADL低下群16.9:p=0.06)。
【考察】当院は急性期病院のため入院期間が短く、肺炎を発症した高齢者のADL能力は肺炎治療中から理学療法を実施しても十分に回復しないことが示唆された。ADL能力が低下した患者は継続的な理学療法が必要であり、今後回復期リハビリテーション病院との連携が重要となってくる。またADL能力が低下しやすい患者は80歳以上に多く、老齢が安静臥床による廃用性筋萎縮を促進すると考えられるので、病態が許す限り早期に離床を試みる必要がある。