理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 630
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内部障害系理学療法
生活習慣病患者における通院による運動療法の効果について
運動回数による効果の比較
*井垣 誠佐野 憲康西岡 正明謝 紹東
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抄録
【目的】我々は国際高血圧学会(2002年プラハ)において、通院による運動療法を実行した群は自宅で行った群よりも血圧の降圧効果が高かったことを報告した。この結果を基に当院では2002年9月に、生活習慣病患者に対して運動療法を主体とした治療を提供する特殊外来を開設した。運動療法の実施は理学療法室を使用し、2003年9月の時点で1日に平均65名の患者が運動のために通院しており、患者数は開設時の約3倍に増加している。本研究の目的は、通院での運動療法の回数により身体組成、血圧、生化学的検査の値の変化に違いがあるかどうかを検討することである。
【対象と方法】対象は初回外来診察以後、6ヶ月を経過した生活習慣病患者74名(男性18名、女性56名、平均年齢54.5歳)である。疾患の内訳は高血圧29名、糖尿病11名、高脂血症27名、肥満5名、その他2名であった。運動療法の内容は、有酸素運動としてはエルゴメータ等を使用して30から60分の運動を行い、患者に応じてストレッチ、筋力トレーニングを加えている。運動強度は、運動負荷試験の結果に基づき50%ATからATの範囲の心拍数を指標にしている。初回診察時と6ヶ月後にBMI、ウエストヒップ比(WH比)、体脂肪率、血圧、生化学的検査について測定した。6ヶ月間の通院回数を調査し、50回以下の群(L群)と51回以上の群(H群)の2群に分け、両群の比較を行った。尚、対象者のうち9名は外来診察および通院運動療法を中断し、この群を脱落群として初回値のみ他の群と比較した。統計解析はt検定、一元配置分散分析を用い、危険率5%以下を有意とした。
【結果】L群(30名、平均回数27回)、H群(35名、平均回数82回)、脱落群の初回値の比較では、全ての項目において有意差は認めなかった。L群、H群の6ヵ月後値の比較では、H群の中性脂肪が有意な低値を示した。初回値と6ヵ月後値の比較において、L群ではBMI、総コレステロール、拡張期血圧が有意な低下を示した。H群ではBMI、血清インスリン値、HOMA-R、中性脂肪、WH比、体脂肪率、収縮期、拡張期血圧が有意な低下を示した。
【考察】近年、心血管疾患危険因子の集積した状態はインスリン抵抗性を基盤としたMetabolic Syndromeとして提唱され、その管理の一手段として運動療法は重要であるとされる。当院は週休2日の公立病院であり、民間運動施設と比べると利用可能な時間は少ない。このためか通院での運動療法の回数にはバラツキがみられた(平均57±35回)。本研究では、頻回に通院したH群においてHOMA-R等のインスリン抵抗性に関連する指標の値を改善させることができた。以上のことから、運動療法による改善の効果を期待するためには、少なくとも6ヶ月間に50回以上すなわち週に2回以上の運動回数が必要であることが示唆された。
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© 2004 日本理学療法士協会
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