抄録
【目的】呼吸機能が低下すると脊柱起立筋群,特に多裂筋に多くの筋硬結がみられ,その治療によって呼吸機能が改善することが知られている.マイオセラピーはMyoVib(マイオセラピー研究所)を用いて後枝支配筋である多裂筋に振動刺激を加えることにより,前肢支配筋の筋機能を改善する手技である.本研究では,健常者を対象に胸椎レベルの後枝支配筋に対するMyoVibの振動刺激が呼吸機能に及ぼす経時的な影響について検討した.
【対象】呼吸循環器に障害のない健常成人20名(男性10名,女性10名)で,平均年齢19.5±3.7歳,平均身長162.1±9.7cm,平均体重57.7±11.3kgであった.これをコントロール群(C群:男性5名,女性5名),MyoVib群(M群:男性5名,女性5名)になるようランダムに振り分けた.
【方法】対象者は腹臥位になり,C群はその姿勢保持,M群は第1胸椎から第12胸椎の多裂筋に対する振動刺激を40分間実施した.振動刺激は疼痛による息こらえが起こらないように振幅3mm,周波数30Hzの小型のMyoVibを用いた.経時的な変化については実施前,直後,2日後の3回,胸郭拡張差,肺機能および呼吸筋力を測定した.胸郭拡張差はテープメージャーを用いて腋窩部,剣状突起部,第10肋骨部の3ヵ所,肺機能はスパイロメータHI-198(日本光電)を用いて努力性肺活量(FVC),1秒率(FEV1.0%),呼吸筋力はMicro MPM(ミナト医科学)を用いて呼気筋力(MEP)と吸気筋力(MIP)を測定した.統計処理は,両群間の年齢,身長,体重はt検定,両群の実施前,直後,2日後の各測定値の検定は,反復測定による二元配置分散分析を求め,有意差が認められた項目については,Post-hocテストを行った.
【結果】両群間の年齢,身長,体重には有意差がみられなかった.胸郭拡張差はM群で腋窩部が実施直後に有意な増加(p<0.05),C群との間に有意差(p<0.01)がみられた.また胸郭拡張差の変化率では,腋窩部と第10肋骨部でM群が直後と2日後にそれぞれ有意な増加(p<0.01,p<0.05)がみられた.剣状突起部,FVC,FEV1.0%,MEP,MIPは有意差がみられなかった.
【考察】胸郭拡張差の腋窩部が増加したのは,胸鎖乳突筋,斜角筋,大胸筋,僧帽筋などの呼吸補助筋の筋機能が改善したことにより,上部胸郭が可動しやすくなったと考えられる.MyoVibによる振動刺激は,胸郭可動性に対して即時的な効果があり,また経時的な効果も得られる可能性が示唆された.今後は,下部胸郭の可動性と肺機能および呼吸筋力に関与する腰方形筋の治療方法について検討する必要がある.