抄録
【はじめに】
急性心筋梗塞(AMI)患者においては復職の問題から、有職者患者は非監視型運動療法を選択しやすいが、監視型運動療法と同様に運動耐容能の改善が認められると報告されている。しかし臨床場面から運動耐容能の改善の因子には、QOLがより強く関与しているのではと考えた。有職者AMI患者の運動耐容能にどのような因子が関係しているのか、健康関連QOL尺度を用い検討したので報告する。
【対象】
2001年12月から2003年6月の間に当センターに入院し、急性期に経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行したAMI患者で、1)60歳未満2)男性3)有職者4)監視型運動療法に不参加であった28例(平均年齢51.8±5.3歳)とした。全例1枝病変であり主病変はLAD16例、LCX1例、RCA11例であった。
【方法】
運動耐容能は退院時(発症後1ヶ月)と慢性期(3から6ヶ月後)に症候限界性の心肺運動負荷試験(CPX)を実施し、最高酸素摂取量(PeakVO2)を測定した。なお、退院時と慢性期のPeakVO2の比較により、対象を運動耐容能増加群(n=20)と運動耐容能減少群(n=8)の2群に区分した。また、慢性期には健康関連QOL(SF-36日本語版)を実施し、日本人の国民標準値をもとにして8つの下位尺度およびサマリー・スコアを調査した。解析には両群間のSF-36の比較にt検定を用いて検討し、運動耐容能増加の有無に関する因子にはロジスティック回帰分析を用い、運動耐容能増加群と減少群を従属変数とし、SF-36の8つの下位尺度とサマリー・スコアを共変量とした。いずれの解析も危険率5%以下を有意水準とした。
【結果】
運動耐容能増加群と減少群の間には、年齢、maxCK、maxCK-MB、左室駆出率、BMIに有意差を認めなかった。SF-36の結果からは、下位尺度の「からだの痛み」「社会生活機能」で増加群が減少群より高値で、他の下位尺度、サマリー・スコアでは減少群が増加群より高値を示す傾向にあった(ns)。運動耐容能増加の有無とに関する因子としてあげた各下位尺度、サマリー・スコアの間にはも有意な関連を認めなかった。
【考察】
SF-36の結果では、有意差は出なかったものの、運動耐容能増加群のほうがサマリー・スコアにおいて低い傾向があった。このような結果になったのは日常生活や運動療法に対して意識が高いためと考えられる。SF-36を用いることによりある程度の疾患特異性が評価可能という報告もあり、今後は症例数を増やしQOLの経時的な変化等を考慮に入れていくことにより、退院後の運動耐容能におよぼす因子について、何らかの関係が得られるのではないかと考えられた。