理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 176
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生活環境支援系理学療法
在宅療養者とその介護者における外出に関わる不安と困難について
*大澤 晴美浅川 康吉宮田 伸太郎小林 照美須永 香津美
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抄録
【目的】在宅療養者における閉じこもりは寝たきりの促進要因と考えられている。外出に介助を必要とする者の場合、閉じこもりを予防するためには、本人と介護者の双方が安心して外出できることが必要である。本研究の目的は、在宅療養者とその主介護者が外出の際に感じている不安や困難の内容を把握し、それらを軽減するための介入のポイントを明らかにすることである。
【対象】群馬県県央域の訪問看護ステーション3ヶ所とデイケア施設1ヶ所および訪問リハビリテーション事業所1ヶ所を通じて在宅療養者に調査協力を依頼し、その主介護者共に個別面接調査の承諾を得られた68組を対象とした。在宅療養者の日常生活自立度(J-ABCランク)はAランク39名、Bランク16名、Cランク13名であり、平均年齢は77.4±10.9歳であった。
【方法】調査期間は平成12年10月から平成14年12月で、調査項目は基本属性と外出に関する項目とした。基本属性については年齢、性別、J-ABCランクなどを、外出に関する項目は在宅療養者および主介護者の外出に関する不安や困難の内容、閉じこもりの有無や外出希望の有無などを調べた。不安や困難の内容は厚生労働省長寿科学総合研究事業「地域在宅高齢者の閉じこもりに関する総合的研究」に準拠し「物的環境要因」「在宅療養者側の要因」「介護者側の要因」に整理した。在宅療養者と主介護者の不安や困難の内容と調査項目の関連はχ2検定を用いて分析した。有意水準は5%未満とした。
【結果】不安や困難の内容には「物的環境要因」として道路の段差やトイレがない、「在宅療養者側の要因」として転倒や健康問題、「介護者側の要因」として介護技術や健康問題などの回答があった。「物的環境要因」と「在宅療養者側の要因」は在宅療養者と主介護者の双方に共通する問題であったが、「介護者側の要因」のうち健康問題は主介護者だけの問題であった。不安や困難と調査項目との関連については、在宅療養者ではJ-ABCランクのBの者は、AやCの者に比べ「物的環境要因」「介護者側の要因」を挙げるものが有意に多く、また在宅療養者の外出希望が有の場合は無に比べて「介護者側の要因」を挙げる者が有意に多かった。主介護者については、特定の関連要因を認めなかった。
【考察】外出に関する不安や困難は「物的環境要因」「在宅療養者側の要因」「介護者側の要因」の多岐にわたっていた。不安や困難の内容は、在宅療養者側の身体機能の問題に矮小化して捉えず、これらの側面から総合的に把握することが必要と思われた。介入のポイントとしては、在宅療養者に主介護者の健康問題の理解を促すことや、主介護者には在宅療養者に不安を与えないレベルの介護技術を身につけさせることが重要と考えられた。
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© 2004 日本理学療法士協会
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