理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 269
会議情報

生活環境支援系理学療法
デイケアの長期的動向
17年の取り組みから
*久保田 道子花岡 利安栗原 かおる佐藤 美智子花田 孝武井 啓恵
著者情報
キーワード: デイケア, 役割, 介護保険
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに】当院は1987年1月に重度障害老人を対象に病院併設型のデイケアを開設。1991年病院併設型の老人保健施設開設に伴いデイケアを病院内から老人保健施設内に移行した。約17年の動向を分析し、デイケアの役割や課題について検討する。
【対象と方法】以下3期間の利用者について属性を比較、さらに第1期から第3期まで継続して利用している7名についてADL変化等をみた。第1期は1987年1月~1991年3月の病院内デイケア利用者161名、第2期は介護保険施行前の1997年7月~9月の老健デイケア利用者80名、第3期は介護保険施行後2003年10月の老健デイケア利用者130名とした。
【結果】デイケア利用者延べ人数は年々増加。年代構成をみると、第1期は65才未満の比較的若い層にも医療として対応していた。老人保健施設に移行し老人医療対象外の者は利用できない状況だったが介護保険法施行により利用可能となり、第3期は65才未満が増加傾向である。性別は開設当初は男性が過半数を占めていたが女性が多くなってきている。対象疾患は第1期は脳卒中等の中枢性疾患が大部分を占めていたが、骨折等の骨関節疾患による利用者が多くなってきている。ADLレベルについては、開設当初と比較し第2期で全介助レベルが多くなっているが、第3期では減少している。病院デイケアから継続利用している7名についてみると、男性3名女性4名、平均利用期間15年8ヶ月、利用開始時の平均年齢61.4才、全員が脳卒中であった。ADLレベルは利用開始時と現在を比較し向上した者2名、不変の者3名、低下した者2名であった。
【考察】デイケアは当初、家に閉じこもっていた障害者の社会参加や介護者の介護負担軽減を主な目的として集団アプローチを中心に行われてきたが、デイサービス事業の普及により、デイケアの役割としては重症者への対応やADL・QOL維持向上のための個別対応が求められるようになり、当院でも必要に応じPT・OT・STが個別に対応してきた。さらに介護保険施行後、デイサービスでも重症者への対応が可能となってきたことにより通所介護・通所リハビリそれぞれの役割がより明確になってきたのではないかということは全介助レベル者の割合の推移から読みとれるが、利用料等に左右されず適切なサービスの選択がされているのかどうかはサービス間の比較による検証や調整が必要と考えられる。また、介護報酬改定により新設された個別リハ加算は生活機能の改善が見込まれる者を対象としているが、開設当初より必要に応じ個別に対応してきたことで機能維持を図り長期的な在宅生活の継続を可能としてきたケースもあり、個別リハの対象者については再検討が必要と思われる。さらに、介護保険後増加傾向にある若い年代層への対応や、デイケアおよび個別リハの客観的な効果判定等も今後の課題である。

著者関連情報
© 2004 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top