理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 473
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物理療法
カエル筋の超音波透過半価深度について
超音波小導子固定法での透過温度による検討
*木山 喬博清宮 真喜
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抄録
【目的】 物理療法の専門書に超音波(US)療法における生体組織の透過半価深度は2~7cmの範囲で記載されている。これを確認する目的で実験したので報告する。
【対象と方法】 対象は取り出したウシガエルの筋肉とした。対象筋は縫工筋、半腱様筋、それ以外の大腿部前面・後面筋、下腿3頭筋、腹部の筋とした。これらの筋を上向きに設置した超音波治療器(イトウUS-700)の小導子(径15mm)の上(重ねる場合あり)に置いた。
 超音波照射条件は、0.2W/cm2,1MHz,照射30秒(連続波)とした。温度は超音波導子とは反対側の筋肉表面で測定し、透過後温度とした。温度プローブは超音波吸収の良好なゴム(径4mm、高さ4mm)に埋め込んだ熱電対温度計(径0.6mm)をX-Yステージに組み込んで使用した。筋肉の厚さはデジタルリニヤゲージ(尾崎製作)の値を記録した。組織内の超音波の波長は約1.5mmと長くないので同一筋をおおよそ0.2~0.9mmの範囲で温度プローブの押し付け深さ(肉厚)を変えて測定し、透過後温度と室温(22~26度)とをパソコンに取り込み、処理した。
【結果と考察】 上昇温度をY、筋肉厚さをXとすると、データから回帰式は、Y=-0.153X+10.163となり、相関係数はR=-0.828で有意な相関があった(p<0.01)。仮に、筋肉厚さXを10mmとして、前式に代入してYを計算するとY=8.555度となり、1/2Yを満たすXが透過半価深度となる。計算するとX=38.4mmとなり、物理療法の専門書に記載されている2~7cmの範囲に納まっている。
 出力強度を決めて超音波を照射した際、導子からの距離が一定であっても強度分布が存在し、その距離が異なれば強度分布もまた変わるといわれており、それらを反映してか、測定値もバラツキが大きかった。データの分布から最大に近い値と最小に近い値から回帰式を求めるとそれぞれ、Ymax=-0.225X+14.337(R=-0.993)とYmin=-0.103X+6.966(R=-0.960)であった。専門書に記載されている透過半価深度は2~7cmと2倍の違いがあるが、YmaxとYminの回帰式の切片(14.337と6.966)からも実験結果のバラツキに倍の開きがあることが確認できた。骨が浅い(組織厚5mm)部位への超音波照射を想定すると骨とゴムの超音波吸収率がほぼ同じなので、本実験の照射条件で骨表面は30秒固定法で約13度の温度上昇が予想される。出力を1.0W/cm2程度で行う場合は一層の配慮が必要と思われる。
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© 2004 日本理学療法士協会
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