理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 476
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物理療法
43℃の前腕浴と43℃の下腿浴の身体反応について
*大重 匡森本 典夫坂江 清弘堀切 豊田中 信行田中 里美
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キーワード: 温熱療法, 部分浴, 43度
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抄録
【目的】 水治療法は表在熱を利用した温熱療法である。通常、水治療法では42°C以上の温浴は高温浴に分類され、一般的に強い交感神経刺激作用を持つとされ、実際の温熱療法で42°C以上の温熱療法はあまり行われていない。しかしながら、我々は身体の一部を温める部分浴であれば、決して強い交感神経刺激作用をもつ温熱療法になるとは考えていない。また、全身を水中に入れることによる負担(静水圧による負担)もなくなることから心臓にかかる負担も軽減すると考える。そこで今回は部分浴として前腕と下腿に対して43°Cの温浴をおこない水治療法の新しい知見を得たので報告する。
【方法】 対象は、健常若年女性15名である。方法は、十分な休息後に43°Cの前腕浴(以下、前腕浴)と43°Cの下腿浴(以下、下腿浴)を4時間以上の間隔をあけてランダムに20分間おこないその後30分間の安静を取らせ経過観察した。浴槽内の水温はIWAKI社製THERMO REGULATOR CTR-32を使用し一定の温度に保たせた。浴前と浴中の測定は、vital signとしてエー・アンド・デイ社製血圧監視装置TM-2541Rを用いて収縮期血圧、拡張期血圧、脈拍を測定した。全身負担度の測定はアニマ社製AT3000により酸素消費量を測定しMets数を算出した。温熱効果は、MINOLTA社製SPOT THERMOMETER HT-7放射温度計を用いて額・頸部・上腕・腹部・大腿・足背・足指の表在温度とTERMO社製深部温モニターCTM-205の表在センサーを舌下で測定することで深部体温を測定した。血流量の変化は、ADVANCE社製ADVANCE LASER FLOWMETER MODEL ALF2100にて上腕部・腹部・大腿部の皮膚血流量を測定した。
【結果】 20分経過時のMets数では前腕浴も下腿浴も約1.3Metsとなった。深部体温は浴前と前腕浴20分経過では約0.6°C上昇した。なお、前腕浴と下腿浴の安静時からの変化について比較すると有意に前腕浴のほうが上昇していた(p<5%)。また前腕浴も下腿浴も浴後30分経過後と安静時と比較すると有意に浴後30分経過後が高かった(p<5%)。入浴部に隣接した部分の皮膚血流は前腕浴では約2倍下腿浴では1.4倍となり、前腕浴の方が皮膚血流比で有意に大きかった(p<5%)。
【考察】 43°Cの前腕浴と下腿浴は、共に1.3Mets程度の非常に軽い負荷強度であったことから、その危険性は非常に低いと考えられる。さらに前腕浴と下腿浴の温熱作用について前腕浴が下腿浴より大きかった。その要因としては、皮膚血流量の増加が下腿浴より大きかったことが大きな要因であったと考えられる。以上の事から43°Cの前腕浴は簡単に行え、かつ温熱効果も優れていることから、浴槽に入らずとも全身の温熱効果が体験できる新しい温熱療法になると考える。
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© 2004 日本理学療法士協会
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