理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 34
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理学療法基礎系
運動頻度の違いがギプス固定後のラット廃用性筋萎縮と関節可動域制限の回復に及ぼす影響
*榊間 春利吉田 義弘坂江 清弘森本 典夫
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抄録

【目的】臨床的に骨折後の固定はよく行われるが、しばしば固定により筋萎縮、筋柔軟性の低下、関節可動域制限などの二次的な障害を生じる。このような二次的な障害に対する理学療法は長期化する事が多く、中には1週間に1日あるいは数日の外来理学療法を継続している患者もいる。筋力増強に対する運動頻度に関して、古くはHettingerやMuellerの報告がある。しかしながら、細胞レベルで廃用性筋萎縮に対する運動頻度の影響を調べた報告はない。今回、異なった頻度のトレッドミル走行が固定によって生じた廃用性筋萎縮と関節可動域制限の回復に及ぼす影響を組織学的に調べた。
【方法】8週齢雌ラットの右後肢を2週間ギプス固定し、固定除去後、無作為に2週間のギプス固定群(IM群)、ギプス固定後自由飼育群(FR群)、低頻度運動群(1日/週、LFR群)、中頻度運動群(3日/週、MFR群)、高頻度運動群(6日/週、HFR群)に分けた。運動は小動物用トレッドミル装置を用いて6週間行った。運動時間と速度はそれぞれ、10分間から開始して6週後には40分間、10°の傾斜で12 m/minから開始して6週後には24 m/minに徐々に増加した。実験終了時に両側のヒラメ筋と腓腹筋を採取して凍結固定した。さらに両側の足関節の関節可動域を測定した。筋は凍結切片を作製し、ヘマトキシリン・エオジン染色、ATPase染色(pH10.3、4.3)、NADH-reductase 染色を行い、筋線維タイプ構成、筋線維タイプ別横断面積、abnormalな筋線維数を計測した。
【結果】2週間の固定によりヒラメ筋と腓腹筋のタイプI線維とタイプII線維の横断面積、足関節の可動域は有意に減少し、ヒラメ筋と腓腹筋のタイプII線維の割合と病理学的な変化を示した筋線維の数は有意に増加した。これらの変化はFR群では改善しなかった。LFR、MFR、HFR群では明らかに改善を示し、特にMFR群やHFR群は筋萎縮の回復に有効であった。しかし、MFR群とHFR群の間には有意な違いは見られなかった。関節可動域はFR群と比較してLFR、MFR、HFR群で有意に改善を認めたが、運動頻度による違いは見られなかった。
【考察】これらの結果よりトレッドミル走行は固定によって生じた筋線維の病理学的変化や関節可動域制限を改善させることが分かった。また、1週間に3日あるいは6日の運動は、非運動や1週間に1日の運動と比較して筋萎縮や可動域制限の回復に有効であった。
【まとめ】関節固定後の筋萎縮や関節可動域制限の回復には1週間に3日以上の運動頻度が必要であることが組織学的に示唆された。

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© 2005 日本理学療法士協会
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