理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 83
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理学療法基礎系
歩行時の安定性低下が姿勢に与える影響
―バランス機能との関連―
*中村 綾子佐藤 春彦柴 喜崇大渕 修一二見 俊郎
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抄録
【はじめに】高齢者では頭部の前方変位を伴った体幹の前屈姿勢が特徴的であり、これまで骨粗鬆症など脊柱の圧迫骨折による脊柱の構築的な変化が原因とされてきた。しかし、骨粗鬆症や脊椎骨折数と脊柱変形は関連がないとの報告もあり、加齢による前屈姿勢は脊柱の構築的な変化がなくても起こりうると考えられる。Cunhaらの仮説によると、高齢者では安定性の低下に対して体幹前屈や膝屈曲を呈して重心を下げる代償を用いており、この代償が長期的に継続した結果、前屈姿勢につながっている可能性が考えられる。そこで今回、歩行時の安定性低下により前屈姿勢を呈するか否か、安定性低下による姿勢変化とバランス機能に関連があるのか、を検討することを目的とした。
【方法】対象は健常若年者8名(21.5±1.3歳)と健常高齢者17名(平均年齢69.1±2.9歳)とし、両側分離型トレッドミル(PW2;日立製作所製)上にて定常歩行と不安定歩行を行った。外後頭隆起、第7頸椎、第8胸椎、左右肩峰、仙骨部に赤外線発光マーカーを貼付し、三次元画像解析装置 (OPTOTRAK3020;Northern Digital社製)を用いて位置を測定した。姿勢として骨盤に対する頭頸部の前方距離、骨盤に対する体幹角度、鉛直線に対する体幹角度を算出し、Friedman検定を用いて定常歩行と不安定歩行で比較した。バランス機能は快適歩行速度、10m最大歩行速度、ファンクショナルリーチ、Timed Up & Go Testとし、姿勢変化との関係をSpearmanの相関係数を用いて検討した。
【結果】骨盤に対する頭頸部の前方距離と骨盤に対する体幹前屈角度は、若年者、高齢者とも定常歩行と不安定歩行で変化は認められなかったが、鉛直線に対する頭頸部、体幹の前屈角度は高齢者のみ定常歩行に比べ不安定歩行で有意に増加した(p<.01)。また高齢者の定常歩行では、静止立位では認められなかった鉛直線に対する体幹の平均前屈角度とファンクショナルリーチ(r=-0.75,<.01)、Timed Up & Go Test(r=0.53,<.05)について有意な相関が認められ、定常歩行に対する不安定歩行での最小前屈角度増加とファンクショナルリーチについても有意な相関(r=0.49,p<.05)が認められた。
【考察】歩行時の安定性低下により、頭頸部が前方変位した姿勢は若年者、高齢者とも呈さなかったが、骨盤前傾と頭頸部、体幹を前方変位させた前屈姿勢は高齢者にのみ認められた。よって、高齢者では歩行時の安定性低下に対し股関節上方の重心位置を前方に変位させている可能性がある。また、静止立位では認められなかった動的バランス機能と前屈姿勢の有意な相関が定常歩行では認められたことから、動的バランス機能は歩行時の姿勢と関連があると考えられる。バランス機能と定常歩行に対する不安定歩行での前屈角度増加量が正の相関を示したのは、バランス機能が低いほど定常歩行において既に前屈姿勢を呈しており、不安定歩行において明らかな姿勢変化が生じなかったためと考えられる。
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© 2005 日本理学療法士協会
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