理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 84
会議情報

理学療法基礎系
パワーリハビリテーションに関する基礎的研究
―ホリゾンタルレッグプレス運動と立ちあがり・歩行動作と比較して―
*塚田 鉄平小島 由紀高橋 浩史佐々木 健史伊藤 俊一
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに】『21世紀における国民健康づくり運動』の中で高齢者の筋力トレーニングは積極的に勧められ、各地域で行われている。その中でマシントレーニングを主体としたリハビリテーションとしてパワーリハビリテーション(以下パワーリハ)が注目されている。パワーリハによる効果についての報告は多くみられるが、マシン使用時の筋活動量を調べた基礎的研究は少ない。そこで今回,パワーリハ設定によるマシン使用時の筋活動量を計測し、立ち上がり・歩行動作と比較,検討したので報告する。
【対象】健常成人20名(男性:10名、女性:10名、平均年齢25.6±8歳)
【方法】Compass社製ホリゾンタルレッグプレス(以下HLP)を用い、測定動作は(1)歩行(2)立ちあがり(3)HLP運動(ボルグ指数11:楽である負荷)とした。導出筋は内側広筋(VM)、内側ハムストリングス(Ham)、腓腹筋(Gas)、前脛骨筋(TA)で全て左側とした。表面筋電図はメガ社製ME-3000Pを用い、動作中の筋活動量は積分値を加算平均(3回)したピーク値とした。得られた値を%MVCに換算し、各筋をHLPと歩行・立ち上がりで比較した。統計にはKruskal-wallis H-test後に多重比較としてMann-Whitney U-testwith Bonferroni補正を用い、有意水準5%未満とした。
【結果】筋活動量について、歩行では平均でVM20.1%、Ham12.5%、Gas45%、TA29.5%。立ち上がりでは平均でVM36.1%、Ham7.2%、Gas13.5%、TA25.8%。HLP運動では平均でVM18.9%、Ham4.2%、Gas9.1%、TA4.3%であった。
1)歩行とHLP運動の比較:Ham・Gas・TAで有意にHLP運動が低かった。2)立ち上がりとHLP運動の比較:4筋全て有意にHLPが低かった。
【考察】パワーリハ設定におけるHLP運動は筋活動量が20%MVC以下と低く、筋力・筋量向上を目指すのではなく、筋持久力・フォーム・運動の習得に適し、継続して行う事のできる運動と考えられた。また歩行・立ち上がりよりも筋活動量が低いことから、関節や内科的なリスクのある虚弱高齢者に対して導入し易く、歩行・立ち上がりが困難である方に対しても前段階の練習として安全かつ有効的に使用できると考えられた.
一方,高齢者の筋力増強は骨代謝の増大や心肺機能の向上などに効果があるとしている。そのため高齢者のマシントレーニングにおいて、パワーリハ設定の負荷だけではなく、リスクを考慮した上での高負荷を設定し、効率良い筋力トレーニングを行うことで筋力・筋量を向上していく事も必要であると考えられる。
今後は対象・負荷・肢位・回数を変化させることでトレーニング効果の違い検討し、またHLPだけではなく他の機種についても明らかにしていきたいと考える。

著者関連情報
© 2005 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top