理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 82
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理学療法基礎系
下肢伸展挙上運動の再考
―関節角度の変化による筋活動の比較―
*田仲 勝一田中 聡山田 英司森田 伸
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抄録

【目的】
下肢伸展挙上運動(SLR)は簡便で,安全性にも優れており臨床現場のみならず,ホームエクササイズとしても用いられている大腿四頭筋筋力強化運動の一つである.しかし,臨床的に大腿四頭筋の筋力低下を認める症例においては,膝関節軽度屈曲位での下肢挙上運動となっている場面が多い.そこで本研究は表面筋電図を用いて,膝関節完全伸展位と膝関節軽度屈曲位での下肢挙上運動時の大腿四頭筋筋活動の違いを明らかにすることを目的とした.
【対象と方法】
対象は本研究の目的を説明し,同意の得られた健常成人男性11名の22肢で,平均年齢25.1±4.5歳,平均身長173.5±5.3cm,平均体重68.1±9.2kgであった.なお全例において筋・骨格系に障害を有するものはいなかった.
表面筋電図の測定にはMyoSystem1200s(Noraxon社製)を使用し,被検筋は大腿直筋,内側広筋,外側広筋とした.測定肢位は仰臥位にて,両股関節中間位から,一側下肢の挙上運動を股関節屈曲角度が20度(股20度)と45度(股45度)の2種類,膝関節角度が膝完全伸展位,膝10度屈曲位(膝10度),膝20度屈曲位(膝20度)の3種類の,計6種類の下肢挙上運動を行わせた.関節角度は徒手によりゴニオメーターで計測した.なお足関節角度は任意とした.各関節角度位置での下肢挙上運動を6秒間保持させ,波形の安定した3秒間の積分筋電図を時間で除した平均積分値を求めた.これを膝完全伸展位,股20度の平均積分値を100%として正規化し,平均積分値比として算出した.
統計処理は一元配置分散分析を用いて,各筋の各関節角度における平均積分値比を比較した.
【結果】
各筋の各関節角度での筋活動は,大腿直筋では,股20度・膝10度が71±34.8%,股20度・膝20度が69.3±25.6%,股45度・膝10度が68.3±39.4%と有意に低値となった(p<0.05).内側広筋では,股20度・膝10度が23.1±19%,股20度・膝20度17.4±14.7%,股45度・膝10度が33.6±31%,股45度・膝20度が33±31.4%と有意に低くなった(p<0.01).外側広筋では,股20度・膝10度が11.3±15.3%,股20度・膝20度が5.4±9%,股45度・膝10度が21.7±17.4%,股45度・膝20度が11.6±10.7%と有意に低値となった(p<0.01).
【考察】
膝関節完全伸展位に比べ,膝関節軽度屈曲位では大腿四頭筋筋活動が低下し,特に膝関節の動的安定機構である内側広筋,外側広筋の筋活動が著明に低下した.SLRは大腿直筋優位の筋力強化運動との報告もあり,大腿四頭筋の筋力強化を目的とするならば,Quad settingなど広筋群優位の筋力強化方法も同時に処方する必要があると考える.

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© 2005 日本理学療法士協会
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