理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 422
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理学療法基礎系
振動刺激によるラット腓腹筋の廃用性筋萎縮の進行抑制効果について
*田崎 洋光沖田 実松田 輝辻井 洋一郎
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抄録

【目的】
 先行研究によれば,不動によるラット腓腹筋の廃用性筋萎縮の進行過程で超音波を照射すると筋線維萎縮の進行は抑制されると報告されている.そして,この効果には超音波照射によって発生する熱の影響よりも,むしろ非温熱作用である微動振動が影響しているといわれている.つまり,この先行研究の結果を参考にすると,振動刺激のみでも廃用性筋萎縮の進行抑制が可能ではないかと思われる.しかし,これまで廃用性筋萎縮に対する振動刺激の影響を検討した報告は非常に少ない.そこで本研究では,振動刺激によるラット腓腹筋の廃用性筋萎縮の進行抑制効果を組織化学的に検討した.
【方法】
 8週齢のWistar系雄ラットを1)4週間無処置の対照群,2)4週間ギプス固定を行う固定群,3)4週間ギプス固定を行い,その過程で週5回の頻度でギプスを除去し,15分間振動刺激を負荷する振動刺激群,4)4週間ギプス固定を行い,その過程で週5回の頻度でギプスを除去し,15分間疑似的に振動刺激を負荷するプラセボ群に分けた.ギプス固定はラット足関節を最大底屈位の状態で行い,振動刺激は振幅幅3mm,周波数20Hzで麻酔したラットの下腿後面に負荷した.なお,プラセボ群には振動刺激群と同様の頻度で麻酔を行い,振動刺激装置の導子をラットの下腿後面にあてる処置のみを行った.4週間の実験期間終了後は,麻酔下で腓腹筋内側頭を採取し,その凍結横断切片をATPase染色し,筋線維タイプの直径を計測した.なお,本実験は星城大学が定める動物実験指針に準じて行った.
【結果】
 固定群,プラセボ群は対照群に比べタイプ1・2A・2B線維すべてその平均筋線維直径は有意に低値を示し,この2群間には有意差を認めなかった.一方,振動刺激群のすべてのタイプの平均筋線維直径は対照群のそれと有意差を認めず,固定群,プラセボ群のそれより有意に高値を示した.
【考察】
 今回の結果から,4週間のギプス固定によってラット腓腹筋のすべてのタイプの筋線維に廃用性萎縮の発生を認めたといえる.そして,このギプス固定の過程で振動刺激を負荷すると筋線維萎縮の進行が抑制されることが明らかとなった.Falempinら(1999)によれば,後肢懸垂によるラットヒラメ筋の廃用性筋萎縮の進行過程でアキレス腱に振動刺激を負荷すると,筋線維萎縮の進行を抑制できると報告しているが,今回,下腿三頭筋に直接振動刺激を負荷しても同様の結果が得られた.つまり,振動刺激は廃用性筋萎縮の進行抑制に効果があることが示唆され,これは振動といったいわゆる頻回な機械的刺激が筋細胞に負荷されたことが影響していると推察される.近年の先行研究によれば,機械的刺激による筋線維肥大効果のメカニズムには成長因子の発現などが関与していると報告されている.つまり,今回の振動刺激による廃用性筋萎縮の進行抑制効果にも同様のメカニズムが生起している可能性が推測され,今後検討を加えていきたいと考えている.

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© 2005 日本理学療法士協会
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