理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 426
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理学療法基礎系
健常者におけるステップ動作時の足圧中心軌跡と下肢および体幹の筋活動
*金井 一暁鈴木 俊明
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抄録

【目的】歩行の実用性低下を認める脳血管障害片麻痺患者においては、歩行中の問題だけではなく、歩行開始が困難であるケースも少なくない。努力性の歩行開始となる結果、連合反応を強め、歩容に悪影響を及ぼすこともある。このような症例に対し、我々はしばしばステップ動作を用いて、下肢や体幹機能にアプローチし、歩行能力の改善を図っている。本研究では、より効果的な治療を提供することを目的に、健常者を対象としてステップ動作時の足圧中心軌跡や下肢、体幹の筋活動を計測し、若干の知見が得られたので報告する。

【方法】神経学的および整形外科学的に異常のない健常者9名(平均年齢29±5.1歳、男性8名、女性1名)を対象とした。重心動揺計の検出台上にて、左下肢を前方にした立位肢位より電子音の合図にて左下肢を軸足としたステップ動作を行い、右足底接地後体重の70%以上を荷重するよう指示した。この間の下肢筋および体幹筋の筋活動および足圧中心軌跡を測定した。足圧中心軌跡の計測には重心動揺計アクティブバランサーEAB-100(酒井医療株式会社製)を、下肢筋、体幹筋の筋活動の測定には筋電計バイキングIV(ニコレー社製)を用いた。対象筋は右側の腓腹筋内側頭、前脛骨筋、内側ハムストリングス、大腿直筋、大殿筋、内腹斜筋と、両側の腰背筋とし、体幹筋の電極の貼付位置はNgら(1998)、Vinkら(1989)の方法に準じた。また、デジタルビデオ2台を用い矢状面および前額面上での動作をそれぞれ撮影した。なお、本研究を行うにあたり、被験者には本研究の目的、方法を説明し、同意を得た。

【結果と考察】足圧中心軌跡については全被験者において、動作開始直前に一度右後方へ変移した後、支持側足部に向け左前方へ移動し、最終的に右前方へと変移した。筋活動については、先行研究で健常者におけるステップ動作時の体幹筋の筋活動は、踵離地前後で左腰背筋が、足底離地前後で右腰背筋が高まり、足底接地前後で左右どちらかあるいは両側の腰背筋が高まるというパターンがあると報告し、本研究でも同様な傾向を認めた。下肢筋の筋活動パターンにおける被験者間での共通点は、動作開始直後に前脛骨筋および大腿直筋が先行して活動を始め、続いて腓腹筋の筋活動が高まり踵離地となる。足趾離地後に再び前脛骨筋の筋活動が踵接地に至るまで継続し、踵接地以降、腓腹筋とハムストリングスの筋活動が高まることであった。本研究の結果で特徴的な点は、動作開始直後から足尖離地までの体幹筋と下肢筋の筋活動には、動作開始直後に前脛骨筋が活動し始め踵離地を迎える時期に左腰背筋の筋活動が高まり、続いて腓腹筋が活動を開始して足尖離地を迎える時期に右腰背筋の筋活動が高まるという関連性があることである。しかし、上記以外の筋群では、体幹筋、下肢筋の筋活動が生じる時期に相違があるものが存在し、これはステップ動作の動作様式の相違によるものと考えられた。

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© 2005 日本理学療法士協会
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