理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 431
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理学療法基礎系
筋収縮様式の相違が筋酸素動態に及ぼす影響について
―求心性収縮及び遠心性収縮による比較―
*寺田 茂村山 大倫宮田 伸吾小中 悠吏松井 伸公山根 和子坂井 明美本口 美沙紀後藤 克宏合田 美恵大酢 和喜夫
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抄録

【目的】スポーツ活動を含む日常生活活動の多くは求心性収縮(COC)及び遠心性収縮(ECC)を合目的に使い分け、あるいは組み合わせる事によって成立している。この動作遂行に重要な筋収縮様式の特性に関しては筋出力、筋活動量等の様々な視点からの検討が諸家によりなされている。今回、非侵襲的に筋組織の酸素動態を測定可能な近赤外線分光装置を使用して、COC、ECC時の筋酸素動態の差異について検討したので報告する。
【対象と方法】対象は、運動習慣及び骨関節疾患を有しない健常男性16名で、測定肢は全例右膝とした。年齢、身長、体重の平均値はそれぞれ、22.8±2.3才、173.6±6.2cm、63.2±8.5kgであった。筋力測定には、バイオデックス社製のバイオデックスシステム3BDX-3を使用した。測定肢位は椅座位とし、大腿部・骨盤部・体幹をベルトにて固定、両上肢は機器側方を把持させた。膝完全伸展位にてアームと膝外側裂隙中心部が同調するようにシートの高さ・前後長を調整した。筋力測定角度は膝関節20度~80度とし、角速度30度/secにて求心性・遠心性屈伸運動を最大努力下でそれぞれ10回行った。測定順序はCOC、ECCとし、各測定間には10分の休憩をとった。筋力は最大トルクを体重で除した値を採用した。筋酸素動態は島津製作所製無侵襲酸素モニタOM-220を使用し測定した。プローブ位置は大転子と外果を結んだ距離の近位1/3の部分とし、外側広筋筋腹に両面テープ及びベルトで固定した。測定は安静時より開始し、筋力測定終了後安静時に収束するまで行った。得られたデータより、酸素飽和度低下量(低下量)・酸素飽和度最下点到達時間(最下点到達時間)・安静時回復時間(回復時間)についてCOCとECC間で統計処理し比較検討した。
【結果】COC群の筋力は平均3.86±0.67Nm/kg、ECC群4.54±0.89Nm/kgとなり、有意にECC群の方が高値であった(P<0.01)。筋酸素動態では低下量はCOC群55.4±12.9%、ECC群52.3±12.6%で有意差を認めなかった。最下点到達時間はCOC群22.5±6.5sec、ECC群35.8±9.2secで有意にCOC群の方が短く(P<0.01)、回復時間はCOC群43.3±10.6sec、ECC群35.6±11secで有意にCOC群の方が遅延していた(P<0.05)。
【考察】筋力はECC群がCOC群よりも有意に高い値を示した。これは諸家による先行研究結果と同様であった。筋力測定時の筋酸素飽和度の最下点への到達時間はCOC群の方が有意に短く、また回復時間も遅延していた。ECC群ではCOC群よりも総仕事量が多いにも関わらず酸素飽和度の低下が遅く、また酸素動態の回復が早かった。これは、ECCはCOCに比較して機械的効率が高く、酸素消費量・筋疲労が少ないと報告されており、これらの結果を支持するものであった。

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© 2005 日本理学療法士協会
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