理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 447
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理学療法基礎系
手指対立運動における左右感覚運動野の賦活に関する定量的検討
―機能的MRIによる分析―
*松田 雅弘渡邉 修来間 弘展津吹 桃子妹尾 淳史池田 由美一場 道緒米本 恭三
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抄録

【目的】片側上肢の運動は必ずしも対側大脳半球のみに支配されているのではなく、同側性の線維連絡があることは、解剖学的にも証明されてきた。我々は、第39回理学療法士学会において、随意運動時の感覚運動野 ( sensorimotor cortex: SMC)において、左右の上肢の運動におけるSMCの賦活に左右差があることを定性的に報告した。そこで、今回、さらに詳細に分析するために、健常者を対象に、片側手指対立運動課題遂行時のSMCの賦活の左右差を各個人間で、機能的MRI(以下、fMRI)を用いて定量的に分析を行った。
【対象・方法】対象は健常成人10名(19-55歳、平均年齢26.2歳。男性4名、女性6名)。利き手はエジンバラバッテリーにて、全員100%の右利きであることを確認した。神経学的な疾患の既往はない。課題は、母指と中指、次いで示指、環指、小指と順に各々1秒間に1回の速度で、連続的にタッピング動作を行った。これらを左右それぞれ自発的に行うように指示した。スキャン時間はこれらの課題と安静を各40秒間とし、安静―右手―安静―左手―安静―右手―安静―左手で撮影した。MRIはGE社製1.5T臨床用MR装置(Signa Horizon)を使用した。撮影は東京都立保健科学大学の放射線科教員が行い、医師が立ち会った。また、すべての対象者にインフォームドコンセントを行い、了解を得ている。本実験は、東京都立保健科学大学での倫理委員会の承認を受けた。データの解析は、得られた画像をMatlab(Math Works)上の画像処理ソフトであるSPM99を用いて、有意水準0.05にて解析を行った。解析した画像は、SMCにおける賦活をvoxel数で定量的に計測し、その信号強度を比較した。
【結果】右手動作時と左手動作時の両側SMCの賦活量を比較すると、右手動作時の両側SMCのvoxel数の平均337.4、左手動作時の平均1031.2であった(p<0.05)。また、運動と同側SMCの賦活を比較すると、右手動作時においては4人の同側賦活がみられ、同側賦活のvoxel数の平均119.8、左手動作時においては6人の同側賦活がみられ、同側賦活のvoxel数の平均302.3であった。
【考察】片側随意運動時に対側半球のみならず運動と同側のSMCも賦活する、という知見は脳の機能画像でもしばしば報告されてきた。本実験の結果は従来の報告を支持するものであり、その原因として、1.左手動作時の同側SMCの賦活は、左半球に存在する運動プログラミングに選択的に関与していること、2.左手の運動は、右手に比べ、より同側性支配が強い可能性などが示唆される。また、非利き手の運動において、同側SMCの賦活するという報告は多くされている。今回の定量的計測より、左手動作時には、両側SMCの賦活量と、運動と同側SMCの賦活量は右手動作の賦活量より多いことがわかる。
【まとめ】左右の片手動作におけるSMCの活性化は必ずしも対称的ではないと考えられる。

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© 2005 日本理学療法士協会
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