理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 452
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理学療法基礎系
身体重心高とパフォーマンスの関係
―腹圧アプローチが及ぼす変化―
*安里 幸健比屋根 剛松原 誠仁
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抄録

【目的】
 近年の研究では体幹及び腹圧が運動や行動に重要であるということは周知の事となっている。しかし、我々は安定性や運動性と関連づけて考察することはまだ少ない様に思われる。そこで、今回腹圧アプローチによってパフォーマンスにどのような変化がみられるのかを重心高の変化に焦点を置き考察したのでここに報告する。尚、今回パフォーマンステストは10m努力歩行を選択した。
【方法】
1.被験者は健常男性10名(平均年齢:24.2±2.0歳)で、内訳は腹圧アプローチ群5名、対照群(腹圧アプローチなし)5名の2グループで実験を行った。
2.上記の2グループにおいてそれぞれ以下の測定を行った。
・腹圧アプローチの前後に10m努力歩行を測定し、タイムの変化を抽出した。対照群は腹圧アプローチなしにて2回の10m努力歩行を測定した。
・腹圧アプローチは指導の下で腹直筋、腹斜筋、腹横筋収縮を有酸素運動にて各被験者定量(各5回づつ)で実施した。
・10m努力歩行の前後に立位姿勢での重心高を測定した(デジタルカメラで撮影した画像をPCソフトにて処理して重心高を求めた)
・上記方法で腹圧アプローチ前後の重心高や歩行スピード変化を分散分析にて統計処理した。
3.重心高算出に使用したでデジタルカメラはsyber-shot DSC-P31: SONY社製、PCソフトはHuda Ver.0.21である。
【結果】
1.重心高は腹圧アプローチ後に有意に上昇した(P<0.05)。腹圧アプローチを行わなかった対照群では有意差はみられなかった。
2.10m努力歩行においては腹圧アプローチ群ではアプローチ後に有意にタイムの短縮をみせた(P<0.05)。対象群においては2回の10m努力歩行において歩行スピードの変化に有意差はみられなかった。
【考察】
 上記結果より、腹圧アプローチにて身体重心高は上昇することが解かった。また、歩行スピードも短縮しパフォーマンスにも影響を及ぼすことが検証された。
 重心高が上昇した理由として、腹圧アプローチが作用したことによって腰椎前弯の緩和や胸椎以下の安定化による胸椎の伸張が起きた為と考える。
 重心高の上昇が歩行スピードの短縮につながった原因として安定性の条件(重心までの高さ、支持基底面の広さ、質量)の逆説で重心高が上昇したことによって不安定になったのではなく運動性が向上したと捕らえることができる。
【まとめ】
以上のことから、歩行において 腹圧を作用させることは力学的な視点からみると重心高を上昇させることで運動性を効率化させていると考えることができる。

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© 2005 日本理学療法士協会
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