理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 454
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理学療法基礎系
若年者と高齢者における肩甲骨面自動挙上時の肩関節可動域の違いについて
*武村 啓住高橋 周子由久保 弘明松崎 太郎細 正博立野 勝彦
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抄録

【目的】
 加齢ともに関節周囲の軟部組織の退行変性を起こし、肩関節においても運動制限を生じると考えられている。本研究では、測定基準部位が明確となる肩甲上腕関節、胸鎖関節、肩甲胸郭関節の三つの関節に注目して、日常生活でよく行われる肩甲骨面挙上運動について若年者と高齢者その動きを比較し、高齢者における肩関節の動きの特性を明らかにすることを目的とした。
【方法】
 肩関節に障害のない健常女性26名で、内訳は20~22歳13名(若年群)、78~91歳13名(高齢群)であった。左右の肩を測定対象とした。身長、体重を計測の後、被験者には体幹軸が床面に対して垂直になるよう端座位をとらせ、肩甲骨面挙上を左右同時に行わせた。上腕骨長軸が体幹軸となす角度を体幹上腕角、肩甲棘の内側端中点と外側端中点を結んだ直線が肩甲骨面上で体幹軸となす角度を体幹肩甲棘角、胸骨長軸の中央線と鎖骨の肩峰端および胸骨端の中央を結んだ線のなす角を胸鎖関節角とし、可動域測定を前額面にて行った。その他、体幹上腕角の補角と体幹肩甲棘角との和を肩甲上腕関節角とした。計測は、左右それぞれ最大挙上位における体幹上腕角と体幹上腕角が0°、30°、90°、最大挙上位における体幹肩甲棘角、および胸鎖関節の角度をゴニオメーターを用い、同一検者が計測した。その結果から体幹上腕角0~30°(第一相)、30~90°(第二相)、90~最大挙上位(第三相)での体幹肩甲棘角、肩甲上腕関節角、胸鎖関節のそれぞれの変化量を計算し各相で若年群と高齢群とを比較した。統計処理は各測定項目で対応のないt検定を用いて危険率5%未満を有意とした。
【結果】
 身長、体重、体格指数(BMI)の平均±標準偏差はそれぞれ若年群160.1±4.3cm、53.8±5.0kg、21.0±2.2、高齢群140.9±7.0cm、45.8±7.0kg、23.0±2.9であり、身長、体重は両群間で有意差を認めたが、BMIでは両群間に有意差を認めなかった。最大挙上位での平均体幹上腕角は若年群 149.4゜、高齢群 128.8゜で若年群が有意に大きかった。平均胸鎖関節角は第一相(若1.7゜、高5.6゜)、第二相(若9.4゜、高12.5゜)、第三相(若21.7゜、高11.1゜)で、第一相、第三相で有意差を認めた。平均体幹肩甲棘角は、第一相(若4.0゜、高5.0゜)、第二相(若10.4゜、高8.7゜)、第三相(若21.3゜、高17.8゜)で、いずれも有意差を認めなかった。平均肩甲上腕関節角は第一相(若26.0゜、高25.4゜)、第二相(若50.0゜、高50.8゜)、第三相(若37.1゜、高21.5゜)で、第三相においてのみ有意差を認めた。
【結論】
 高齢者では胸鎖関節の動きを大きくすることで肩甲骨面挙上の可動域を確保していることが示唆された。

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© 2005 日本理学療法士協会
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