理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 455
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理学療法基礎系
筋収縮の反復に伴う運動イメージ再生の戦略変化の検討
―経頭蓋磁気刺激を用いて―
*高橋 真倪 臻山下 剛正梁 楠矢作 晋笠井 達哉
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抄録

【目的】運動の習熟度に応じて,運動イメージの再生に違いが生じ,その違いは運動誘発電位(MEP)に記録される.しかしながら,なぜそのような差異がMEPに生じるのかは明らかではない.運動イメージ中のMEPの変化は,抹消からの感覚情報を取り除いた純粋な脳内の活動を反映した結果として,筋活動を伴わない条件下であるにも関わらず,実際に筋が収縮する場合と同様に,運動関連中枢領域(主に運動野)で惹起される運動神経生理学的変化を反映していると考えられる.そこで,本報告は短時間の筋収縮の反復トレーニングを行なわせ,運動野にどのような変化が生じ,運動イメージ再生にどのような戦略的変化を及ぼすかについてMEPを指標に検討した.

【方法】被験者は健常成人10名(女性5名,年齢24~45歳)であった.なお, 被検者には実験の目的と方法を十分に説明し,同意を得て実験を行なった.筋電図は表面電極法により,第一背側骨間筋(FDI)から記録した.磁気刺激装置(MAGSTIM社, MAGSTIM‐200)を用いてFDIから安静時および運動イメージ中に安静時閾値(Threshold) の1.0~1.5倍まで刺激強度を変化させ,MEPを導出した.運動イメージは最大張力での示指外転運動とし,イメージ中には背景筋放電がないことを確認した.また,筋収縮トレーニングは等張性外転運動(60~70%MVC)を0.5Hzの頻度で,10試行×10セット実施した.得られたMEPは尺骨神経の最大上刺激により誘発した最大M波との比で標準化した.

【結果および考察】1.4~1.5xThの刺激強度において、練習後では運動イメージ中のMEPがより増大する傾向にあったが、統計的には有意ではなかった.その要因として、個人間でのRecruitment curveが安静時においてでさえ、ばらつきが大きいこと,運動イメージ再生に個人差があること,などが考えられる.そこで、各個人における安静時と運動イメージ中のMEPの差について練習前後で検討した.その結果,1.4~1.5xThの強い刺激強度において、練習前に比べ練習後では、安静時と運動イメージ中のMEPの差は有意に増大した.これらの結果は、筋収縮の反復トレーニングに伴い、動作遂行の効率化を図るため、より閾値の高い皮質脊髄路細胞を選択的に動員するようになり、運動イメージ再生方法も実際の動作遂行と同様の可塑的変化が生じていることを示唆する。

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© 2005 日本理学療法士協会
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