理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 464
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理学療法基礎系
下肢随意運動時における運動関連脳磁場計測の試み
*大西 秀明相馬 俊雄大山 峰生黒川 幸雄大石 誠亀山 茂樹
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抄録

【目的】
脳の神経細胞が活動するとそれに伴い微弱な磁気が発生する.この微弱な磁気を頭皮外から計測したものが脳磁図である.光や音,電気刺激などを用いた誘発脳磁界に関する報告は数多くあるが,随意運動に伴う運動関連脳磁場(MRCF)に関する報告は少ない.今回我々は下肢随意運動時にみられるMRCFの測定を試みたのでその結果を報告する.
【方法】
対象は右利き健常男性4名(平均年齢31歳)である.脳磁界測定には204チャネル全頭型脳磁界計測装置(Neuromag,フィンランド)を使用し,安静座位にて測定した.動作課題は右示指伸展運動と右足趾伸展運動の2種類とした.さらに右正中神経および右後脛骨神経の電気刺激(1.5Hz,200msec持続時間,強度は運動閾値の1.2倍)による体性感覚誘発磁界(SEF)も計測した.MRCFの測定には,それぞれの運動開始を示すLEDトリガーを使用し,5秒に1回程度のセルフスピードで50回以上の運動を行わせ,オンラインで加算平均した.SEFの計測はそれぞれ300回以上加算平均した.加算されたMRCF波形は0.5Hzから20Hz,SEF波形は5Hzから100Hzのバンドパスフィルタ処理を行いそれぞれ等価電流双極子(ECD)を算出した.
【結果】
示指伸展運動時におけるMRCFの波形は,運動準備磁場(RF),運動磁場(MF),運動誘発磁場(MEF)のそれぞれが全ての被験者において明確に観察された.足趾伸展運動時におけるMRCFの波形は,RFおよびMFは全被験者において明確であったが,MEFの波形は1名のみ明確であった.ECDを算出する際の適合性を示すgoodness of fit値(g値)は,示指伸展および足趾伸展ともにRF時には全被験者で70%以下と低く,明確なECDを算出することはできなかった.示指伸展運動におけるMFのg値は4名中3名で80%以上であり,MEFのg値は4名とも80%以上であった.足趾伸展運動においては,MFのg値は4名中3名が80%以上であり,MEFのg値は1名のみが80%以上であった.ECDの局在をみると,示指伸展時におけるMFのECDは正中神経刺激誘発磁場第一成分(N20m)のECDより内側やや前方にみられ,MEFのECDはMFのECDよりもN20m局在に近い位置であった.足趾伸展時におけるMFのECD局在は後脛骨神経刺激誘発磁場第一成分のECDのやや内側前方に位置していた.
【考察】
本研究は足趾伸展運動に伴うMRCFの測定を試みたものであり,4名の被験者全てにおいて明確なMFの波形が観察された.しかし,MEFの明確な波形は4名中3名において見られなかった.この原因が,足指運動においてはMEFが観察されにくいためなのか,計測方法に問題があったためなのか明確でなく今後の課題である.

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© 2005 日本理学療法士協会
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