理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 465
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理学療法基礎系
靴のヒール高が心肺機能に与える影響
―心肺機能面からみた適切なヒール高―
*山元 佐和子竹井 仁
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抄録
【はじめに】ハイヒール靴について、外反母趾や凹足、転倒及び転落の危険性などさまざまな報告があるが、心肺機能に与える影響についての報告は少ない。そこで、今回は心肺機能面からみた適切なヒール高について若干の知見を得たのでここに報告する。

【方法】対象は、下肢および心肺機能の重大な疾患・喫煙歴・脚長差のない健常女性9名で、年齢、身長、体重、BMIの平均はそれぞれ、年齢21.8(19-24)歳、身長161.9±2.88cm、体重50.95±3.61kg、BMI19.42±1.28であった。運動課題は、靴のヒール高を0cm、1.5cm、3cm、4.5cmの4種類とし、それぞれでのトレッドミル上歩行を4分間とした。歩行速度は、被験者の主観による快適歩行とした。分析項目は歩行速度、収縮期血圧、拡張期血圧、心拍数、酸素摂取量、METs、PCI、脈圧、二重積の8項目とした。METsは酸素摂取量を被検者ごとに体重で除して算出した。統計処理はSPSS(ver.10)を用い、各項目に対して4種類のヒール高を要因としたFriedman検定を行った。Friedman検定において有意差があると判定されたものについては、さらにWilcoxonの符号付順位検定にBonferroniの不等式を適用した多重比較検定(p<0.01667)を実施した。

【結果】Friedman検定では、METs(0cm:2.58 METs、1.5cm:2.70 METs、3cm:2.67 METs、4.5cm:2.85 METs)にて有意差が検出された。そこで、0cmと1.5cm、0cmと3cm、0cmと4.5cmの3つの組み合わせで多重比較検定を行った結果、0cmに対し4.5cmで有意に高い値となった。

【考察】今回の実験では、分析項目すべてにおいて、0cmから3cmの間では有意差が検出されなかった。しかし、歩行速度に差がないにも関わらず、METsでは0cmに対し4.5cmが有意に高い値となった。METsは、歩行速度によって変化するが、今回の実験では歩行速度にて有意差が検出されておらず、その影響は除外されている。また、ハイヒール歩行時の筋活動は、ヒール高が3cm前後までは素足時と同程度あるいは減弱し、ヒールが高くなると筋活動も同様に増大するとされている。以上より、ハイヒール歩行におけるMETsの増加は、筋活動量の増加によって酸素需要が増大したためと考えられるが、今回の実験では筋電計による測定を行っておらず、推測の域を出ない。

【まとめ】適切なヒール高は、他にも転倒リスクの問題や、足骨格変形の問題などを考慮して検討するべきである。しかしながら、少なくとも心肺機能面からみた適切なヒール高については、0cmから3cmの間であると考えられる。
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© 2005 日本理学療法士協会
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