理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 466
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理学療法基礎系
循環動態から見たUpright Step低負荷運動の有用性
*三島 誠一郷 貴大杉原 敏道
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抄録

【目的】
 この研究では低負荷運動時におけるUpright position(以下、UP)でのHR dynamicsと迷走神経活動の関係、ならびにUPとSupine position(以下、SP)による心拍数と血圧の動態から、低負荷運動の有用性ならびにUPによる低負荷運動の効果について検討する。
【方法】
 健常男性7名(21-24歳)に、UPでエルゴメーター上安静6分、運動負荷6分のSTEP負荷を施行した。その際の負荷強度は30W、60W、90Wの3種類とし、回転速度は60rpmとした。テスト中はbeat by beatで心拍数(以下、HR)を計測した。同時に非観血的連続自動血圧計(Ohmeda製)から収縮期血圧(以下、SBP)と拡張期血圧を計測し、平均血圧(以下、MBP)を算出した。また、これらの指標からDouble Products(以下、DP)を求めた。各運動負荷レベルでの迷走神経活動の違いを調べるため、安静時と運動中の定常部分のR-R intervalを最大エントロピー法(諏訪トラスト社製)を用いて周波数解析した。次に、30W負荷強度によるSTEP負荷をSPで安静6分、運動6分で施行して、上記と同様の循環パラメーターを計測した。
【結果】
 30Wの負荷強度では、他の60Wと90Wの負荷強度に比べ運動時に有意な迷走神経活動の亢進ならびにHRの低下を認めた。30W負荷における体位の比較では、安静時でUPのHRの方が有意な高値を示したが、運動中はUPのHRの方が有意な低値を示した。一方、MBPは安静時ならびに運動時ともSPでUPより高値を示し、DPも高値であった。
【考察】
 SPでの運動負荷はUPより効率的に運動耐容能を高めることが出来ると報告されているが、一方で静水圧の作用が異なるため循環動態について考慮する必要性を報告する文献も存在する。今回は運動負荷強度を30W、60W、90Wと設定し、UP STEP負荷を加えることで30W負荷時に有意な迷走神経活動の亢進を認めた。このことから低負荷運動(30W)は、それ以上の負荷強度と比較して迷走神経活動を有意に亢進する効果があると考える。
30W STEP負荷でUPとSPを比較すると、安静時では静水圧の影響を受けて代償的にUPの方がHRは高値を示したが、運動中では逆転して低値であった。またMBPならびにDP とも常にUPの方が低値であった。これらは、体位の違いによる自律神経系の影響や動脈圧反射だけでは説明し難く、心肺圧反射も影響を与えたものと考察する。このことから、この様なUPの循環動態を利用した低負荷運動は循環系へのクールダウンなどに有用であると考えられる。

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© 2005 日本理学療法士協会
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