理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 475
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理学療法基礎系
進行型廃用性筋萎縮予防に対する水中運動の実施頻度が筋組織に及ぼす影響
*李 相潤鈴木 孝夫平野 望柿崎 智子
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キーワード: 廃用性筋萎縮, 予防, 頻度
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抄録

【はじめに】
高齢者における廃用性筋萎縮の予防の目的として,水中運動(HE)が推奨されているが,運動頻度が筋組織に及ぼす効果については未だに明らかではない。本研究はラットを用い,HEの実施及び頻度が廃用性筋萎縮予防にもたらす効果と,頻度の相違がどの程度であるかについて組織学的に検討した。

【方法】
生後8週齢の雄性Wistar系ラットを用い,対照群(C群),後肢懸垂群(S群),後肢懸垂と週5日HE群(SH5群),後肢懸垂と週7日HE群(SH7群)に分け,各ラット左右下肢のヒラメ筋と足底筋を対象筋とした。研究方法:1)ラットを後肢懸垂し、水槽を用い,一回一時間同時間に強制的な水中運動を実施する。2)2週間後,各群ラットより対象筋を摘出し,通常の方法・手順によりパラフィン浸透組織と凍結組織を作成する。3)上記2)の浸漬組織は回転式ミクロトームにより薄切(7μm)し,ヘマトキシリン・エオジン染色する。また,凍結組織はクリオスタットにより薄切(7μm)し,ATPase染色する。各プレパラートを光学顕微鏡にて観察し,筋横断面積と筋線維タイプを画像処理解析した。4)対象筋の4群間において,計量組織学的に多重比較により比較検討する。

【結果および考察】
 C群を100%として筋横断面積比を比較すると,ヒラメ筋ではC群(100%)>SH5群(50.3%)>SH7群(46.5%)>S群(35.0%)の順で,すべての群間では有意差が認められた(何れもp<0.0001)。そして足底筋ではC群(100%)>SH7群(97.3%)>SH5群(96.8%)>S群(80.2%)の順で,有意差が認められたのはC群とS群,S群とSH5及びSH7群間であった(何れもp<0.0001)。ヒラメ筋に著しい筋萎縮が生じたのは,筋線維のタイプ構成はI型線維が多く,不動化による筋萎縮ではI型の割合が減少してII型線維の割合が増加することから,廃用性筋萎縮によるタイプの構成比率の変化によるものと考えられる。一方,足底筋の筋タイプ構成はII型線維が極めて多いため,不動化による構成比率の変化の影響を受けず萎縮比が少ないものと思われる。筋萎縮予防としてHEを行った結果, S群のC群に対する断面積比を予防効果0%として各群の予防効果率を求めると,ヒラメ筋ではSH5群が23.5%,SH7群が17.7%,足底筋ではSH5群が83.8%,SH7群が86.4%あり,足底筋において著しい予防効果が認められた。これは水中での身体の前進運動には膝関節ならびに足関節の強い屈曲運動が必要であり,関節に対して足底筋が腓腹筋と同程度の主動筋として作用した結果と考えられる。つまり,HEの実施にはヒラメ筋と足底筋に含まれている筋繊維の特性が考慮され,HEの実施による筋萎縮の予防効果には5日でも高いことが示された。

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© 2005 日本理学療法士協会
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