理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 476
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理学療法基礎系
末梢神経損傷部におけるNGFの発現とそれに対する磁気刺激の影響
*藤本 太郎松原 貴子松本 路子田崎 洋光三木 明徳
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抄録

【はじめに】 神経成長因子(Nerve Growth Factor; NGF)は発生時に交感神経や感覚神経の伸張促進と生存維持を行う神経栄養因子の1つである。末梢神経が損傷されると、損傷部付近の非神経組織でNGFの合成が増加するといわれているが、NGFが神経再生に及ぼす影響について不明な点が多い。また、物理療法の1つであるパルス磁気刺激が末梢神経の再生を促進するという報告があるが、その作用機序も明らかにされていない。そこで今回、末梢神経損傷部におけるNGFの発現と、これに対する磁気刺激の影響を免疫組織化学的に観察した。
【材料と方法】 本研究ではddY系雄マウス12匹(11週齢, 体重37.5-39.8g)を用いた。ネンブタールを腹腔内に投与後、右大腿中央部の皮膚に切開を加えて坐骨神経を露出し、コッヘルを用いて大腿中央の高さで坐骨神経に30秒間挫滅損傷を与え、ただちに皮膚を縫合した。また、左坐骨神経は露出したのみで皮膚を縫合した(正常群)。パルス磁気刺激には、8字型コイル(最大頂点磁場強度2.0T)を備えた磁気刺激装置(Magstim200, ミユキ技研)を用い、損傷直後または1日後に、8字型コイルを損傷部直上の皮膚に当て、最大出力の10%の強さで、2秒に1回の割合で、10分間刺激した。神経損傷のみを与えたマウス(非刺激群)は損傷1日後と2日後に、神経損傷後に磁気刺激を与えたマウス(刺激群)は損傷2日後に麻酔下にて2%パラフォルムアルデヒド溶液で灌流固定し、神経損傷部を取り出し、ドライアイスで冷却したアセトン中で凍結した。厚さ約5μmの縦断凍結切片を作成し、NGFを免疫組織化学的に染色し、光学顕微鏡と電子顕微鏡で観察した。
【結果】 光学顕微鏡下では、神経損傷後にNGFの免疫染色は損傷部の近位と遠位端でともに増強した。損傷1日後には神経上膜や神経周膜に沿って陽性像が認められ、2日後には、球状の細胞に強度な陽性像が観察された。電子顕微鏡下では、損傷部付近の線維芽細胞やシュワン細胞の基底膜に、陽性像が観察された。磁気刺激によって、免疫染色は損傷部の近位と遠位端でさらに増強した。また損傷直後よりも1日後に磁気刺激を行った方が免疫染色は強かった。 
【考察】 我々はこれまでに磁気刺激が再生神経の伸張や成熟を促進することを観察した。今回の観察では損傷部付近に発現するNGFが磁気刺激によって増強していたことから、磁気刺激には神経再生の促進とNGFの増強に何らかの関係があることが示唆された。

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© 2005 日本理学療法士協会
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