理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 478
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理学療法基礎系
電気刺激による培養骨格筋細胞の筋肥大効果
*西浜 かすり岩田 全広平澤 純村上 太郎鈴木 重行
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抄録

【はじめに】筋力増強はリハビリテーション医療において現在でも重要な課題の一つである。筋力は筋断面積と相関すると言われており、筋力増強と筋肥大は深い関係にある。電気刺激は骨格筋の成長を促す刺激の一つとして用いられ、理学療法の臨床場面でも筋力増強や筋萎縮の予防を目的として一般的に施行されている。動物実験においても電気刺激により筋湿重量、筋断面積増加などの筋肥大効果が報告がされている。しかし、電気刺激によりどのような分子メカニズムで筋肥大が起こるのかは明らかにされていない。そこで本研究では、分子メカニズムを解明するための一歩として、培養骨格筋細胞に電気刺激を与え、その筋肥大効果について形態学的に検討した。
【方法】培養骨格筋細胞は、マウス骨格筋由来の筋芽細胞株C2C12細胞を用いた。コラーゲンコートした細胞培養皿に筋芽細胞をまき2日後に筋芽細胞を筋管細胞へと分化させるために培地を替えた。培養開始7日目より筋管細胞に3日間の電気刺激を行った。電気刺激装置は日本光電社製SEN-7203を用いた。対照は、電気刺激を行った電気刺激群(以下、ES群、n=139)と非電気刺激群(以下、CON群、n=158)に分けた。電気刺激条件は、矩形波、刺激頻度1 Hz、刺激持続時間2.5 msec、電圧50 V、刺激時間は5 min/hとした。筋肥大の評価は、電気刺激終了後ギムザ染色を行い、PC上で1本の筋管細胞につき50 μm等間隔で計3カ所の横径を測定し、その平均値を採用した。筋管細胞の同定はトロポニンT抗体による免疫染色で確認した。検定にはWelch'st-t検定を用いた。
【結果】電気刺激による筋管細胞の収縮は培養 7日目より観察可能であった。筋管細胞の横径はES群(平均18.25±4.42 μm)がCON群(平均14.07±2.9 μm)より有意に増加した(p<0.0001)。
【考察】培養骨格筋細胞は、成長ホルモンや伸張刺激で肥大するが、電気刺激による細胞レベルでの肥大を評価した報告はなかった。今回の電気刺激条件において、培養骨格筋細胞が肥大するということが分かった。しかしながら、電気刺激による筋肥大の原因が電気的な刺激そのものによって引き起こされるものなのか、電気刺激による培養骨格筋細胞の収縮が関係しているのか本研究では不明である。今後、電気刺激による筋肥大に関わる分子メカニズムを解明していき、筋力増強、筋力低下の予防を目的とした科学的根拠に基づく治療方法の確立に繋げたい。

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© 2005 日本理学療法士協会
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