理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 479
会議情報

理学療法基礎系
前腕寒冷負荷に対する指尖動脈流入量の変化
*梛野 浩司高取 克彦徳久 謙太郎生野 公貴宇都 いづみ奥田 紗代子鶴田 佳世岡田 洋平松尾 篤冷水 誠庄本 康治
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】
 健常人において星状神経節に対する物理療法の末梢循環への影響を測定する場合、寒冷負荷試験が行われている。しかし、多くの寒冷負荷試験は末梢循環測定部位を直接氷水に浸す方法が行われている。また、氷水の温度も一定ではない。
 本研究の目的は、前腕部への寒冷負荷による指尖動脈流入量(Digit Blood Inflow; DBI)の変化をストレンゲージプレチスモグラフィーを用いて測定することである。

【方法】
 対象は健常成人10名とした(男性5名、女性5名、平均年齢27.4歳)。被検者を安静仰臥位とし20分間の安静を行った後、10分間安静時のDBIを測定し、引き続き10分間の寒冷負荷を行いながらDBIを測定した。DBIの測定はD.E.Horkanson社製EC5Rプレチスモグラフを用いて行った。静脈閉塞用カフを手関節部に装着し、閉塞圧を60mmHgに設定した。測定部位は右中指中節部とした。測定は2分間隔で行い、安静中5回、寒冷中5回、計10回測定した。寒冷負荷はOG技研社製低温治療装置(コールドエアー)を用いて-40°Cにて行った。冷却部位は右肘関節から静脈閉塞用カフ装着部までの前腕部とした。その他の副次的評価項目として平均血圧、心拍数 (オムロン社製自動血圧計HEM-757)、手掌皮膚温度 (安立計器株式会社製AP300) を2分間隔で測定した。解析は安静時DBIと寒冷時DBIをpaired t-testにて検定した。

【結果】
 安静時DBIは24.03±14.91ml/100ml/tissuesであった(変動係数19.84%~71.95%)。寒冷時DBIは7.76±12.36ml/100ml/tissuesであった(変動係数23.24%~70.37%)。寒冷時DFIは有意に低下していた(P=0.0003:平均差16.269、95%CI 9.813-22.726)。手掌温度は安静時34.33±0.93、寒冷時32.23±1.23と有意に低下していた(P=0.0006:平均差2.10、95%CI 1.19-3.01)。血圧、脈拍の変動は認められなかった。

【考察】
 前腕部への寒冷負荷により指尖部動脈流入量は有意に低下した。このことから、前腕部への寒冷負荷により交感神経の活動性が亢進したことが示唆された。これにより末梢部の毛細血管が収縮し動脈流入量が低下した。今回の測定では安静時の指尖動脈流入量の変動係数は19.84%~71.95%、寒冷時は23.24%~70.37%であった。指尖動脈流入量の測定は非常に変動性が大きく、再現性に欠ける測定法であった。そのため、同一セッション内で前後の変動性を比較する測定として使用することが有用であると考えられた。

著者関連情報
© 2005 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top