理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 480
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理学療法基礎系
歩行立脚期における環境適応のメカニズム
*相澤 高治石井 慎一郎
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キーワード: 関節制御, CL角, 床反力
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抄録

【目的】
二足歩行は不安定な中で平衡を維持し、自動調節された運動パターンを再現するという力学対応が要求される動作である。時々刻々変化する路面環境や歩行速度の変化に対応しながら、常に一定の動作パターンを再現しなくてはならい。こうした力学対応の背景に存在するメカニズムについて、運動力学的観点から論じた報告は少ない。本研究の目的は、歩行立脚期における下肢の運動制御がどのようなメカニズムで行われているのかを調べる事である。
【方法】
対象者は健常成人12名(男性8名、女性4名、平均年齢32歳)とした。被験者の自由歩行中の下肢関節角度と床反力ベクトルを三次元動作解析装置VICON 612(VICON MOTION SYSTEM社製)ならびに床反力計(AMTI社製)を用いて計測した。計測回数は各被験者10歩とした。本研究において特に着目したのは、歩行周期中で最も制御の困難な床反力鉛直方向成分が最大となる立脚初期とし、この時期の股関節、膝関節、足関節の屈伸角度の変動幅を求め、下肢ダイナミックアライメントの冗長性を調べた。また、床反力ベクトルと股関節と足関節を結んだ線のなす角(CL角)を求め、床反力ベクトルが下肢軸に対してどのように作用しているかを調べた。
【結果】
計測により得られた10歩の平均と変動幅を以下に示す。ただし、CL角の極性は下肢軸を基準として床反力ベクトルが進行方向へ傾斜している時を(-)とした。各関節角度は、股関節屈曲17.4°(SD±4.75)、膝関節屈曲16.7°(SD±8.16)、足関節底屈14.8°(SD±3.31)であった。一方、CL角は平均-0.15°(SD±1.33)であった。関節角度とCL角の変動幅を比較すると、関節角度の変動幅がCL角の変動幅よりも大きいという傾向があった。
【考察】
歩行中において下肢が床面と接触するということは、関節制御の観点からみると作業座標系におけるコンタクトタスクとみることができる。イニシャルコンタクト後の最大床反力がかかる時期に、下肢関節のアライメントを固定値として同じフォームを作り出しているのではなく、床反力ベクトルと下肢軸とを一致させるように対応していることがわかった。路面環境や歩行速度が一歩ごとに違うにも関わらず、常に一定の動作パターンが再現されるのは、歩容によって再現性があるのではなく、CL角が常に下肢軸と一致するように制御されていることによる。このことから臨床場面において歩行訓練などではフォーム(正常な歩容)を指導することより、支持面に対する出力の仕方を指導することの方が有用ではないかと考えられる。

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© 2005 日本理学療法士協会
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