理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 482
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理学療法基礎系
しゃがみ込み動作の違いによる姿勢と下肢への影響
*澄川 智子中井 英人永谷 元基荒本 久美子森 友洋牧本 卓也林 尊弘林 満彦
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抄録

【はじめに】
日常生活では物を拾うなどしゃがみ込み動作が必要なことがある。整形外科術後におけるしゃがみ動作は腰部、下肢に対する負担が大きいとされADL指導の中でも重要な要素である。そこで今回しゃがみ込み動作の違いにより体幹角度および下肢関節モーメントから比較検討し、若干の知見を得たので報告する。
【対象と方法】
対象は実験の主旨を説明し書面にて同意の得られた、下肢と体幹に既往のない健常青年 23例(男19名、女4名)とした。平均年齢23.8歳、平均身長169.8cm、平均体重62.5kgであった。測定機器は左右独立式床反力計(アニマ社製MG1120)で、三次元動作解析装置(アニマ社製Locus MA6250)を用い右側の肩峰、剣状突起、腸骨稜上縁、大転子、外側上顆、外果、第5中足骨頭の7ヶ所に赤外線反射マーカーをつけ計測を行なった。剣状突起と腸骨稜は背臥位で肩峰と大転子を結んだ線とそれぞれの水平面との交点と定めた。しゃがみ込み動作は、1:両足内側縁が接し全足底を床についた状態から踵を浮かせながら行う(揃え型)、2:右脚前方にて左膝を床について行う(前型)、3:右脚後方にて右膝を床について行う(後型)の3種類とした。前型と後型ではしゃがみ込み完了時に内側上顆と内果が隣り合うよう歩幅を調節した。検者の合図でしゃがみ込みを開始し、完了まで3秒とした。被験者は床反力計上に裸足で乗り両上肢は床と平行になるように肘関節伸展位、前腕回内位で挙上、前方を注視し、サンプリング周波数60Hzで、カメラ2台にて撮影した。計測は肩峰-腸骨稜-剣状突起(以下、腰部)、肩峰-剣状突起-腸骨稜(以下、上胸部)の体幹角度、最大の下肢各関節モーメントとした。体幹角度は矢状面で測定し、しゃがみ動作完了時の前型と後型の平均(膝接地型)と揃え型の2群間で、動作時後弯最大値を3群間で比較した。統計には多重比較検定を用い、危険率5%未満を有意差ありとした。
【結果】
下肢関節モーメントにおいて、股関節伸展モーメントは前型、揃え型、後型の順に有意に大きかった。体幹角度においてしゃがみ込み動作完了時では腰部において揃え型が膝接地型より大きく、上胸部において有意に小さかった。最大値では上胸部と腰部において前型と揃え型が後型より有意に大きかった。
【考察】
今回の結果よりしゃがみ込み動作完了時には揃え型は膝接地型より腰部において後弯し、上胸部において前弯しており、従来通り片脚を1歩ずらしてしゃがみ動作を行なう方が体幹アライメント変化は小さいと思われた。しかし動作過程において上胸部、腰部に有意差はみられず、しゃがみ込み動作の違いにより体幹への負担は変わらないと考えられた。ただ股関節伸展モーメントからみれば後方に下肢をずらした方が負担は小さく、一側のみ障害がある場合このようなしゃがみ動作が有効的であると示唆された。

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© 2005 日本理学療法士協会
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