抄録
【目的】
歩行分析に関する研究の一つとして,歩行時の筋活動に着目し,表面筋電図を用いた報告が多数なされている。しかし,歩行周期における筋活動時期を詳細に分類し,定量的に報告したものは我々が渉猟した限りない。また,歩行時の主要な体幹および下肢筋群の相互関係について検討したものは希少である。そこで本研究では,歩行時における体幹および下肢筋群の筋活動パターンと各筋活動時期,さらに各筋の相互関係について着目し,筋電図学的に分析した。
【方法】
対象は過去に上下肢および体幹に機能障害の既往歴を有さない健常男性14名(年齢:21.9±1.4歳,身長:171.3±5.8cm,体重:65.0±6.1kg)であった。まず,最大随意収縮を行い,その後9.0s/10mを目標とした10m歩行を3回行った。被験筋は外腹斜筋,脊柱起立筋,腹直筋,大殿筋,大腿筋膜張筋,中殿筋,長内転筋,外側広筋,内側広筋,大腿直筋,大腿二頭筋,半腱・半膜様筋,前脛骨筋,外側腓腹筋,内側腓腹筋,内側ヒラメ筋とした。ただし,電極の貼付部位は下肢筋群および腹直筋では右側,外腹斜筋と脊柱起立筋では両側とした。表面筋電計は,TELEMYO 2400T(NORAXON社製)を使用し,sampling周波数は3kHzで,パーソナルコンピュータに取り込んだ。そして,1歩行周期時間を100%に補正し,階級幅5%で各筋の筋電積分値(integrated EMG:以下IEMG)を算出した。歩行時のIEMGはすべて最大随意収縮時のIEMGで補正し,相対的IEMG(以下%IEMG)とした。統計学的処理として多重比較検定(Tukey検定)を用い,各階級幅間の%IEMGの差を検定した。そして,%IEMGが有意(p<0.05)に高い階級幅を持つものを筋活動区間(以下,活動区間)とした。
【結果及び考察】
足関節,膝関節,股関節の各周囲筋および体幹筋について検討した。足関節周囲筋に関して,歩行周期の5%から内側ヒラメ筋が有意に活動し,その後歩行周期の15%以降では腓腹筋の筋活動が有意となった。また,下腿三頭筋の筋活動は,歩行周期の55%から急激に減少した。膝関節周囲筋に関して,踵接地前からみた場合,外側広筋,内側広筋,大腿直筋の順で有意な活動区間が認められた。股関節周囲筋に関して,踵接地前から股関節伸展筋活動をみた場合,大腿二頭筋,大殿筋,半腱・半膜様筋の順で有意な活動区間が認められた。また,体幹筋は股関節が伸展運動から屈曲運動へ,屈曲運動から伸展運動へと切り代わる際に活動区間を認めた。これは,安定した下肢筋活動を得るために,体幹筋が効果的に作用していると考えられた。