理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 497
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理学療法基礎系
自転車エルゴメーター駆動時の体幹筋活動
*渡辺 進石田 弘大槻 桂右
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抄録

【目的】慢性腰痛症患者では、疼痛や疼痛に対する不安のために身体活動量が低下し、体力も低下するという報告がみられる。体力低下は患者の社会生活への復帰にとって大きな問題となるので、リハビリテーションの視点からも関心が高い。それに対して、腰痛症患者の体力維持のための有酸素運動についての報告が増えてきた。しかしながら、有酸素運動は腰部の骨・関節や筋への過度の負担をもたらし腰痛の悪化や再発のリスクもともなう。にもかかわらず、有酸素運動時における体幹の筋活動に関する報告は少ない。本研究の目的は、有酸素運動によく使用される自転車エルゴメーター駆動時および歩行時の体幹の筋活動に関する基礎的データを提供することである。
【対象と方法】対象は腰痛症の病歴のない健康な男性11名(平均年齢21.7±2.5歳)であった。全員に実験について十分な説明を行い、同意を得た後に実施した。表面電極を3cmの間隔で右腹直筋、右外腹斜筋、右腰部(L3)脊柱起立筋に貼付した。測定と解析にはNORAXON社製筋電計を用いた。始めに最大随意収縮(MVC)を行わせ筋活動の正規化のための基準とした。次に自由歩行を行わせ5歩分を記録した。最後に自転車エルゴメーター(キャトアイ社製)を駆動させた。サドル高は下死点で膝屈曲30度となるように設定した。体幹前傾角度は約85度とした。25Wから開始し順に50W、75W、100Wと負荷を30秒ずつ漸増し、その間の筋活動を記録した。得られたデータは整流し、平均活動電位をMVCで正規化した(%MVC)。歩行時とエルゴメーター各負荷時の%MVCを一元配置分散分析で統計処理した(p<0.05)。
【結果】腹直筋について、歩行時5.2±4.2%、エルゴメーター負荷25W時5.7±5.3%、50W時5.7±4.9%、75W時6.2±5.7%、100W時6.5±5.6%であった。いずれの間にも有意差はなかった。外腹斜筋について、歩行時33.3±19.0%、25W時27.8±14.5%、50W時28.9±15.0%、75W時30.3±14.2%、100W時32.7±16.0%であった。いずれの間にも有意差はなかった。脊柱起立筋について、歩行時12.1±3.6%、25W時7.3±2.6%、50W時8.8±3.2%、75W時10.5±4.3%、100W時11.7±4.7%であった。歩行時と25W時、歩行時と50W時および25W時と100W時の間に有意差がみられた。
【考察】エルゴメーター駆動時の腹直筋活動は歩行時と大差なく約6%MVCであった。腹直筋は腹部前面の筋のため、両下肢の交互運動の影響が少ないものと思われる。外腹斜筋も各運動の比較では同様の傾向であったが、約30%MVCと比較的高値を示した。外腹斜筋は腹部側面の筋のため、両下肢の交互運動時の体幹固定のために比較的高い活動を求められるためと考えられる。脊柱起立筋は歩行時と比較してエルゴメーター駆動時には低値を示し、負荷の増加に応じて漸増した。両下肢の交互運動時に脊柱を後方から安定させるために漸増したものと思われる。

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© 2005 日本理学療法士協会
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