理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 726
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理学療法基礎系
不動化されたラット距腿関節軟骨に対する持続的他動運動の影響
*坂本 淳哉吉田 大輔折口 智樹中野 治郎沖田 実江口 勝美
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抄録
【目的】
 関節を不動化すると、関節軟骨は細胞の集族化、表層の粗造化、基質の破綻など、様々な組織学的変化を生じることが古くから知られており、最近では、軟骨細胞にアポトーシスが生じることも報告されている。一方、Salterらが関節軟骨の変性や損傷に対しては持続的他動運動(Continuous passive motion;以下,CPM)が有効であると報告して以来、整形外科術後においては可及的早期からCPMが実施されている。つまり、このことから推するとCPMは前記のような関節不動化に伴う関節軟骨の変化に対しても効果的ではないかと思われるが、この点について検証した報告は見あたらない。そこで、今回我々は、ラット距腿関節をギプスで4週間不動化し、その過程でCPMを行い、関節軟骨におよぼす影響について組織学的に検討した。

【方法】
 実験動物には8週齢のWistar系雄ラット10匹を用い、すべてのラットの右側後肢を膝関節最大屈曲位、足関節最大底屈位で4週間ギプス固定し、左側後肢は無処置とした。そして、そのうち5匹は、週6回の頻度で右側後肢のギプス固定を解除し、ヒト用アンクルストレッチャーを用いてCPMを1日1回30分行った(CPM群、n=5)。また、残りの5匹は右側後肢のギプス固定を継続的に行った(I群、n=5)。なお、CPM群・I群から無作為に5匹を選択し、その左側後肢を対照群として用いた(C群、n=5)。実験期間終了後は、麻酔下で足関節を採取し、ホルマリン固定、脱灰後に通法のパラフィン包埋処理を行った。そして、5μm厚の矢状断連続切片を作成し、組織学的検索のためにHE染色を、アポトーシス細胞の検出のためにTUNEL染色を施した後、光学顕微鏡を用いて検鏡した。また、各染色像を顕微鏡用デジタルカメラでパーソナルコンピューターに取り込み、脛骨ならびに距骨の関節軟骨層の厚さ、軟骨細胞密度、TUNEL陽性細胞の出現頻度について検討した。

【結果】
 I群の関節軟骨では、石灰化軟骨層における軟骨細胞の核の濃縮像、軟骨下骨層からの血管様構造の進入といった正常から逸脱した組織学的所見が認められた。 しかし、C群、CPM群では関節軟骨の異常所見はほとんど認められなかった。次に、関節軟骨層の厚さを比較するとC群に比べI群は有意に低値で、CPM群はC群と有意差を認めなかった。また、軟骨細胞密度も関節軟骨層の厚さと同様の結果であった。一方、TUNEL陽性細胞は脛骨、距骨ともI群が最も多く、次いでCPM群、C群の順であった。

【考察】
 今回の結果、I群では関節軟骨層の菲薄化、軟骨細胞密度の減少、加えてアポトーシスと思われるTUNEL陽性細胞の増加が認められ、関節不動化によって関節軟骨は廃用性変化を生じたと推察される。そして、CPM群ではこれらの所見が少なかったことから考えると、CPMによって関節内滑液が流動し、十分な栄養が軟骨細胞に供給され、その結果として関節軟骨の廃用性変化の進行が抑制されたのではないかと思われる。
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© 2005 日本理学療法士協会
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