理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 727
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理学療法基礎系
テーピングによる上腕骨頭の前方制動効果
*野谷 優生島 直樹福田 明雄前田 仁千羽 壮二岩淵 和人元脇 周也山野 仁志小柳 磨毅
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抄録

【はじめに】肩関節に対する螺旋状のテーピングが投球動作のlate cocking phaseにみられる肩の痛みや不安感に効果を示すことがある。そこで今回我々はテーピングによる肩関節外転、外旋位の上腕骨頭の前方制動効果を、X線画像にて検証したので報告する。
【対象】肩関節と肘関節に明らかな傷害の既往がない野球経験者3名とした。被験者の平均年齢は26.0歳、平均身長169.7cm、平均体重59.2kgであった。被験者には十分な説明を行い、被爆に対しての同意を得た。
【方法】テーピングは座位にて肩関節外転90°・内外旋0°・水平内転30°、肘関節屈曲90°にて、上腕中央部より肩関節の前方を通り胸部前面を終点としてキネシオテープを螺旋状に貼付し、その距離を基準距離とした。テープの張力は基準距離110%、120%、130%の3通りとした。レントゲンの撮影肢位は仰臥位にて、肩関節外転90°・水平内外転0°(1名のみ水平内転30°位も撮影)、肘関節屈曲90°にて最大外旋位(以下MER)まで誘導し、肩甲骨面で軸写撮影を行った。なおMERの外力はパワートラック2(JTECH社製)を用いて24.2Nに統一した。撮影は整形外科医師の指示のもと熟練した放射線技師が以下の方法にて行った。線源フィルム間距離を1mとし、入射角は上下方向0°、体幹の長軸に対しては20°とした。撮影画像からモーゼのリングにて上腕骨頭の中心を求め、骨頭変位率を算出した。
【結果】水平内外転0°位でのテープ張力110%では3名とも骨頭変位率は0%であった。120%では2名に骨頭の前方制動効果を認め、骨頭変位率は平均2.2%であった。130%では3名とも骨頭の前方制動効果を認め、骨頭変位率は平均3.3%であった。水平内転30°位でのテープ張力110%、120%、130%すべてにおいて、骨頭変位率は6.7%と骨頭の前方制動効果は高かった。
【考察】テーピングは関節制動や筋のサポートに用いられるが、投球動作においては上肢の運動範囲を確保する必要性がある。テープ張力130%では3名ともに制動効果を認めたが、3名とも「投げにくい」との訴えがあり、実際の投球動作に支障をきたすものと考えられた。そのため主観的な感覚を考慮に入れながら、120%前後の張力でのテーピングが投球動作を阻害しにくく且つ前方制動効果が期待できると推察された。また、水平内転30°位での上腕骨頭の前方制動効果は高く、上腕骨頭が関節窩に対して求心位となり関節の安定化を図り易い同肢位でテーピングを実施する有効性が示唆された。

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© 2005 日本理学療法士協会
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