理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 728
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理学療法基礎系
Functional Reachにおける身体能力
―関節モーメント,関節角度,及び,重心位置の検討―
*伊藤 弥生山田 拓実吉田 弥央武田 円小島 肇
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抄録
【目的】Functional Reach(機能的上肢到達検査:以下,FR)はバランス能力の指標として用いられるテストである.これまで,下肢筋力や運動戦略との関係,他のバランス検査との比較などについて報告されている.そこで,本研究は健常者におけるFR時の体幹・股関節・足関節モーメントを検討することにより,テストで必要とされる身体能力を明らかにすることを目的とした.
【方法】対象は健常成人7名(男性3名,女性4名,年齢22.4±2.6歳)であった.測定には三次元動作解析システム(Oxford Metrics社製VICON370,KISTLER社製床反力計)を使用した.関節モーメント,関節角度,および,重心位置はBody Builder3.6を使用してBody Languageによる解析プログラムを作成した.測定動作は,静止立位からFR開始肢位(肘関節伸展位で肩関節90°屈曲位)をとらせ,前方へ最大限リーチさせた.その際のリーチ距離,体幹屈伸・股関節屈伸・足関節底背屈モーメント,関節角度,及び,体重心と頭部・上腕・前腕・体幹・大腿・下腿・足部の重心位置を算出した.
【結果】静止立位からFR開始肢位までは,体幹・下肢の関節角度と関節モーメントの変化は非常に少なかった.重心位置の前後成分は上腕が9.5cm前方,前腕が32.7cm前方移動したのに対し,頭部が5.4cm後方,体幹が3.1cm後方,大腿が1.3cm後方移動した.体重心は3名が0.6cm前方、4名が0.9cm後方移動した.関節角度・関節モーメント・重心位置の各項目とリーチ距離の間で直線的関係がみられた.リーチにより,体幹は28°屈曲,股関節は32°屈曲,足関節は10°背屈した.体幹伸展モーメントは13.7Nmから69.8Nmに,股関節伸展モーメントは5.7Nmから47.7Nmに,足関節底屈モーメントは9.5Nm から29.2Nmにそれぞれ増加した.重心位置は体幹が10.9cm前方,大腿が7.0cm後方,体重心は10.0cm前方にそれぞれ移動した.体幹の重心位置は体重心に近似した移動であった.FRでの最大リーチ距離は31.1cmであった.
【考察】静止立位から上肢を前方挙上するだけでは,体幹伸展モーメントに大きな影響は及ぼさず,ごくわずかな各体節のアライメント調整により,FR開始肢位を保持していると考えられた.前方へリーチするとき,つまり,姿勢が崩れていくとき,足関節底屈・股関節伸展モーメントと共に体幹伸展モーメントも大きく増加したことから,下肢能力だけでなく体幹筋力もFRに必要な身体能力の一つと考えられた.健常者の場合,体幹・股関節・足関節筋力をバランスよく発揮することにより,前方リーチ能力を高めていることが分かった.
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© 2005 日本理学療法士協会
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